ムハンマド・ダーウード

サルダール・ムハンマド・ダーウード・ハーン：激動の時代を生きたアフガニスタンの指導者

サルダール・ムハンマド・ダーウード・ハーン（1909年7月18日 - 1978年4月28日）は、アフガニスタンの政治史において重要な役割を果たした人物です。彼は旧王族の一員であり、最後のアフガニスタン国王となったザーヒル・シャーの従兄弟でもありました。

首相としての活動と改革

1953年から1963年まで首相を務めたダーウードは、アフガニスタンの近代化を強く推進しました。特に軍事力の強化を重視し、ソビエト連邦からの軍事援助を積極的に導入しました。これにより、アフガン軍はソ連の軍事顧問団の駐在や将校の留学を通じて近代化が進められました。また、軍事面だけでなく、経済、社会、教育システムなど幅広い分野で改革に取り組みました。しかし、これらの改革は伝統的なウラマー（イスラム教の知識人）からの反発を招き、彼らによる反政府運動を引き起こしました。これに対し、ダーウードはウラマーへの弾圧を行い、その結果、旧来のムッラー（イスラム教の指導者）の影響力は低下し、代わりに急進的なイスラム主義を掲げるマドラサ（イスラム教の学校）の学生たちが台頭するようになりました。

クーデターと大統領就任

1963年、世論の反発を受けてザーヒル・シャーによって首相の座を退いたダーウードでしたが、1973年、ザーヒル・シャーが病気療養のために国外へ出た隙を突いてクーデターを成功させました。王政を廃止し、自らが大統領となる共和制への移行を宣言、1977年には正式に大統領に選出されました。大統領となったダーウードは、イスラム主義者に対する弾圧を強化し、後にムジャーヒディーン（イスラム戦士）の指導者となる人物たちも国外へ逃れることを余儀なくされました。また、当初は改革を支持していたアフガニスタン人民民主党のパルチャム派も弾圧の対象となり、政府から追放されました。

悲劇的な最期

1978年4月27日、アフガニスタン人民民主党支持の将校が指揮する軍事クーデターが発生しました。翌日、ダーウードは家族18人と共に革命派の将校によって殺害されました。遺体は長らく所在不明でしたが、2008年にクーデターに関与した元将校の証言により、当時の革命派拠点であった軍駐屯地の庭から発見されました。2009年には、首都カーブルで国葬が執り行われ、当時の大統領や政府閣僚、ダーウードの孫も参列しました。この国葬に際しては、反政府武装勢力タリバンが攻撃を行わないと約束したことが特筆されます。

ダーウードの遺産

ダーウードは、アフガニスタンの近代化を推し進めようとした一方で、その強権的な政治手法や弾圧は、後のアフガニスタン社会に大きな影響を与えました。彼の生涯は、激動のアフガニスタン現代史を象徴する出来事として記憶されています。彼の死後も、アフガニスタンは混乱と不安定な状態が続き、紛争と動乱の時代を迎えることとなりました。彼の改革と悲劇的な最期は、アフガニスタンの歴史において重要な教訓を残しています。

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