ムハンマド7世 (ナスル朝)

ムハンマド7世：ナスル朝グラナダのスルターン、その治世と外交

ムハンマド7世（1370年 - 1408年）は、ナスル朝グラナダ王国の第12代スルターンとして、1392年から1408年まで統治しました。ユースフ2世の息子であり、ムハンマド5世の孫にあたります。彼の治世は、レコンキスタの進行とカスティーリャ王国との絶え間ない紛争によって特徴づけられます。

即位と初期の政策

1392年、父の死を受けて王位に就いたムハンマド7世は、当初、隣接するキリスト教国との平和を模索しました。しかし、1394年にアルカンタラ騎士団による侵攻を撃退したことをきっかけに、カスティーリャとの間でより広範な戦争が勃発しました。紛争の中、カスティーリャ王エンリケ3世との和平交渉も行われました。

外交戦略

ムハンマド7世は、カスティーリャに対抗するため、アラゴン王マルティン1世やナバラ王カルロス3世との外交交渉を積極的に行いました。特に、1404年から1405年にかけては、マルティン1世との友好条約締結に成功し、カスティーリャによる対グラナダ三国同盟の締結を阻止しました。カルロス3世からは軍事的な支援も受け、カスティーリャとの対立に備えました。

カスティーリャとの戦争

停戦と再開戦を繰り返す中、1406年にエンリケ3世が死去し、幼いフアン2世が王位を継承すると、カスティーリャの摂政政治が始まりました。フェルディナンド1世が摂政としてグラナダへの攻勢を強め、1407年にはサハラ・デ・ラ・シエラを占領しました。ムハンマド7世も北東部で襲撃や包囲を行うなど、抵抗を続けました。1408年4月には7ヶ月間の休戦に合意しましたが、その直後の5月13日にムハンマド7世は死去しました。

治世の評価と背景

ムハンマド7世の治世は、グラナダにとって厳しい時代でした。カスティーリャの勢力が増大し、グラナダはかつてのように北アフリカのイスラム諸国からの支援を期待できなくなっていました。大砲などの攻城兵器の発展も、グラナダの防衛を困難にしました。また、国境地帯では紛争が頻発し、中央政府が統制を取りにくい状況も生じていました。ザハラ・デ・ラ・シエラを含む領土を失ったことも、彼の治世における課題でした。

背景

ムハンマド7世は、一時的にスルタンだったユースフ2世の息子で、ムハンマド5世の孫にあたります。兄のユースフ（後のユースフ3世）がいましたが、即位の際に陰謀により投獄されていました。ムハンマド7世の統治に関するイスラム側の資料は少なく、キリスト教側の資料に多くを依存しています。

死とその後

ムハンマド7世の死後、兄のユースフ3世が王位を継承し、カスティーリャとの休戦期間を延長しましたが、その後もグラナダとカスティーリャの間の敵対行為は再開されました。

ムハンマド7世の治世は、ナスル朝グラナダ王国が衰退に向かう時代の転換期であり、彼の外交手腕と軍事的努力は、王国を維持するために不可欠なものでした。

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