ムラサキシキブ

ムラサキシキブ（紫式部）

ムラサキシキブ（学名: Callicarpa japonica）は、シソ科ムラサキシキブ属に分類される落葉低木です。日本各地の山林に自生し、その美しい紫色の実が特徴で、観賞用としても広く栽培されています。別名ミムラサキとも呼ばれます。

名称の由来

和名の由来は、紫色に熟す実の重なり具合を「紫重実（むらさきしきみ）」と呼んだことにちなみ、平安時代の女流作家である紫式部に例えられたとする説が一般的です。また、別名である玉紫は、その紫色の小さな丸い実から名付けられました。学名の属名Callicarpaは、ギリシャ語の「美しい（kalos）」と「実（karpos）」を組み合わせたもので、その実の美しさを表しています。英名も「Beauty Berry」、ドイツ名も「Schönfrucht」と、いずれも実の美しさに焦点を当てた名前が付けられています。

分布

北海道南部から琉球列島まで、日本全国に広く分布しています。海外では、朝鮮半島、中国、台湾にも分布が見られます。山野や低山の森林によく見られ、林道沿いなどにも自生しています。庭木としてもよく植えられています。京都の嵯峨野にある正覚寺は、ムラサキシキブ（コムラサキ、シロシキブ）の名所として知られています。

特徴

• - 樹形: 高さ2～3mになる落葉広葉樹の低木です。小枝はやや水平に伸び、樹皮は淡褐色をしています。若木の樹皮は滑らかで、一年枝は細く、灰褐色でほぼ無毛です。太い幹の樹皮は縦に裂けてきます。
• - 葉: 対生し、菱形に近い長楕円形で、先端は少し尖っています。大きさは6～13cmで、細かい鋸歯があります。葉の色は黄緑色で、薄く表面に光沢はありません。秋には淡い黄色に紅[[葉]]します。
• - 花: 初夏から夏（6～7月頃）に、葉腋から集散花序を出し、小さな淡紫色の花を咲かせます。
• - 果実: 秋（10月頃）に、直径3mmほどの球形の果実が紫色に熟します。葉が散った後も、果実や花序の柄は冬まで残ります。栽培品種には、白い実をつけるシロシキブもあります。
• - 冬芽: ベージュ色の星状毛が密生した裸芽で、短い柄のついた細長い幼葉が向かい合っています。

変異

ムラサキシキブは変異の幅が広く、栽培品種も多く存在します。特に、白い実をつけるシロシキブはよく栽培されています。また、果実の小さいコミムラサキシキブや、葉の小さいコバノムラサキシキブなども知られています。ただし、栽培品種にはコムラサキも含まれるため、注意が必要です。

オオムラサキシキブ

オオムラサキシキブ（学名: Callicarpa japonica var. luxurians）は、変種として扱われるもので、基本変種に比べて葉が厚く、大きく、長さが20cmにも達します。枝や花序も一回り大きいのが特徴です。本州以南に分布し、琉球列島ではこの変種が一般的です。ただし、基本変種との中間的なものも多く、明確な区別が難しい場合もあります。岩手県では準絶滅危惧種に指定されています。

近似種

同じ仲間には、ヤブムラサキや庭木としてよく見られるコムラサキなどがあります。

コムラサキ

コムラサキ（学名: Callicarpa dichotoma）は、全体的に小型ですが、たくさんの実をつけるため、観賞用として人気があります。別名コシキブとも呼ばれます。高さは1.5m程度で、山麓や湿地に自生しています。樹皮は黄褐色で滑らかです。枝は細く、紫褐色をしています。葉は倒卵状楕円形で、秋に薄い黄色に紅[[葉]]します。花は夏（6～8月頃）に薄紫色の花を咲かせます。果実は紫色に熟し、ムラサキシキブの仲間の中では最も多くの実をつけることで知られています。冬芽は球形や卵形で、淡褐色の星状毛に覆われています。

コムラサキは、本州（福島県以南）、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、中国、台湾に分布しています。岩手県では絶滅、その他多くの都道府県でレッドリストに掲載されています。ムラサキシキブとよく混同されますが、コムラサキの方が全体的に小ぶりです。葉の鋸歯はコムラサキが先端半分だけなのに対し、ムラサキシキブは全体に鋸歯があることで区別できます。また、花序の付き方も異なり、コムラサキは葉の付け根から少し離れた上につきます。

ウラジロコムラサキ

ウラジロコムラサキ（学名: Callicarpa parvifolia）は、環境省のレッドリストで絶滅寸前の種に指定されている小笠原諸島の固有種です。

その他

「○○ムラサキシキブ」という名前は、ムラサキシキブの品種や変種に付けられることが多く、ムラサキシキブ属の他の植物には「○○ムラサキ」という名前が付けられています。日本にはヤブムラサキやトサムラサキなどの類似種も自生しています。ムラサキシキブ属の植物は、東アジア、東南アジア、アメリカ大陸、オーストラリアなどに数十種が分布しています。

利用

ムラサキシキブは、庭木や花材として利用されるほか、丈夫な幹は道具の柄にも使われていました。特に、美しい花や実を観賞する目的で栽培されることが多いです。ただし、栽培されているものの多くはコムラサキであることに注意が必要です。

脚注

注釈

出典

参考文献

• - 亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年10月5日、118頁。ISBN 978-4-418-14424-2。
• - 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、56頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
• - 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、183-185頁。ISBN 4-12-101834-6。
• - 林将之『紅[[葉]]ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
• - 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日。ISBN 4-522-21557-6。

関連項目

• - ヤブムラサキ

もう一度検索