ムー (テレビドラマ)

TBS系ドラマ『ムー』：個性豊かなキャラクターと笑いに満ちた足袋屋「うさぎや」の物語

1977年、TBS系列の水曜劇場で放送されたテレビドラマ『ムー』は、東京・新富の足袋屋「うさぎや」を舞台にしたホームコメディです。同名のオカルト雑誌やムー大陸とは全く関係ありません。コメディリリーフ的な役柄が多かった伊東四朗が本格的に主演を務め、岸本加世子のデビュー作にもなりました。郷ひろみと樹木希林の絶妙な掛け合い、伴淳三郎、由利徹、左とん平といった名脇役たちのコミカルな演技も見どころです。

物語の中心となるのは、足袋屋「うさぎや」の個性豊かな家族と従業員たちです。伊東四朗演じる4代目主人・宇崎安男は、妻である渡辺美佐子演じる小春に支えられながら、個性的な家族と従業員たちと日々を過ごします。長男の健太郎（清水健太郎）、長女の桃子（五十嵐めぐみ）、次男の拓郎（郷ひろみ）は、それぞれ異なる個性と悩みを抱え、時に衝突しながらも、家族の温かさを感じさせるシーンが数多く描かれます。

特に、郷ひろみ演じる拓郎は、一橋大学受験に失敗し浪人生活を送る青年という設定で、樹木希林演じる手伝いさん金田久美子との軽妙な掛け合いは、ドラマ全体を盛り上げる重要な要素となっています。金田は、時に騒動を起こすものの、家族や従業員から愛される存在です。岸本加世子演じる香川加世子など、個性的な若い従業員たちのキャラクターもドラマを彩ります。

『ムー』は、従来の水曜劇場の作品とは異なるバラエティ色豊かなドラマでした。第8話と24話では生放送という異例な試みが行われ、24話ではセリフが拾えないというハプニングもありました。また、足袋屋「うさぎや」の前を様々なジャンルのゲストが通り過ぎる「通行人ゲスト」という演出も番組名物となりました。このバラエティ要素は、続編である『ムー一族』でさらにエスカレートしていきます。

数々の有名ゲストも出演しており、ピンク・レディー、沢田研二、志村けんといったそうそうたる顔ぶれがカメオ出演するなど、視聴者を驚かせました。これらのゲスト出演は、ドラマにさらに華やかさを添えています。さらに、森光子や鈴木清順といった俳優も出演しており、それぞれの個性あふれる演技が物語に深みを与えています。

主題歌「ムーのテーマ／ムー一族」をはじめ、岸本加世子の「北風よ」、郷ひろみと樹木希林の「お化けのロック」、清水健太郎の「恋人よ」など、印象的な挿入歌も数多く使用されました。これらの楽曲は、ドラマの雰囲気をさらに高める役割を果たしています。

放送終了後、肖像権や著作権の問題、そして清水健太郎の不祥事などにより、地上波やBSでの再放送はほとんど行われていませんでしたが、2009年にはDVD-BOXが発売され、2019年にはBS12 トゥエルビで久々の再放送が実現しました。

『ムー』は、個性豊かなキャラクター、笑いに満ちたストーリー、そして豪華なキャストとスタッフによって生み出された、忘れられない名作ドラマと言えるでしょう。その独特な世界観と魅力は、現在でも多くの視聴者の心に残り続けています。

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