ムーア (地形)

ムーア（湿原）とは

ムーア（moorland または moor）は、酸性の土壌に背の低い草木が生い茂る土地のことで、日本語では「湿原」と訳されます。英語のmoorは、古いゲルマン語で「沼地」を意味する言葉に由来し、元々はイングランドからスコットランドにかけて点在する荒涼とした山野を指していました。

分布

ムーアは、アフリカの新熱帯区や熱帯地域に多く分布していますが、西ヨーロッパ、オーストラリア北部、北米、中央アジア、インド亜大陸などにも点在しています。世界のムーアの多くは、多様な生態系を抱えており、特に熱帯のムーアは、動植物の多様性が非常に高いことで知られています。

生態

ムーアは、涼しく湿ったヒースの荒野とは異なり、ボグ（泥炭地）が広がることも多く、様々な動植物が生息する複合的な環境です。ヨーロッパのムーアには、アカライチョウ、ハイイロチュウヒ、コチョウゲンボウなどの鳥類、ヨーロッパクサリヘビなどの爬虫類、カエルなどの両生類が生息しています。

しかし、ムーアでの過放牧は、植生の消失を招き、飼料価値の低いイネ科の植物やワラビが優占するようになり、動物相を大きく減少させる原因となります。また、過酷な土壌やムーア特有の気象条件のため、固有の野生動植物が生息していることもあります。例えば、イングランドのエクスムーアには、希少なエクスムーアポニーが生息しています。

カルーナ属（ヒース）の木が生い茂る場所も多く、ヒースが繁茂する丘陵地は、スコティッシュ・ブラックフェイス種などの羊の生育に適しています。高緯度のムーアは、スコットランドのハイランド、アイスランド、ノルウェーなどの低地で見られます。さらに北に進むと樹木が生育できなくなり、ムーアはツンドラへと移行します。

利用

ヨーロッパでは、ヒースの刈り取りが定期的に行われ、新たな草の成長を促しています。また、ムーアを定期的に野焼きするよりも、ヒースの種子を発芽させる方が効果的であることもわかっています。しかし、ヒースや他の植物が成長しすぎると、乾燥して燃えやすい状態になり、大規模な野火の原因となることがあります。一般的に、ムーアの生態系は、頻繁な野焼きが行われなければ、比較的容易に再生することが可能です。

イギリスの有名なムーア

ブリークロウ
ボドミン・ムーア
カリー・アンド・ヘイ・ムーアス
ダートムーア
エムリー・ムーア
エクスムーア
イルクリー・ムーア
マーストン・ムーア
ランノッホ・ムーア
カロデン・ムーア
ロンボールズ・ムーア
サドルワース・ムーア
シュロップシャー・ヒルズ
スタッフォードシャー・ムーアランズ
イタン入り江

その他の国のムーア

タンナー・ムーア - オーストリア

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