ムーサ・トラオレ

ムーサ・トラオレ：マリの元大統領

ムーサ・トラオレ（Moussa Traoré、1936年9月25日 - 2020年9月15日）は、マリ共和国の軍人、政治家であり、同国の第2代大統領を務めました。

生涯

1936年、フランス領スーダン（現在のマリ）西部のカイで生まれました。カイエ州キータで学んだ後、フランスのフレジュス軍事学校に進学。1960年にマリがフランスから独立すると帰国し、1961年に少尉、1963年には中尉に昇進しました。その後、タンガニーカ（現在のタンザニア連合共和国）へ解放運動の軍事教官として赴任しています。

クーデターと軍事政権

1968年11月19日、トラオレはモディボ・ケイタ大統領に対するクーデターに参加し、その後の国民解放軍事委員会の議長として国家元首に指名されました。彼は全ての政治活動を禁止し、軍事政権に批判的な研究者や教師を密告者に監視させました。また、ケイタ政権下の社会主義経済政策の一部を廃止しました。

1972年から1973年にかけてマリを襲った大干ばつでは、国際的な援助金が不正に使用されるという問題も発生しています。1974年には民政移管のための憲法改正を行い、1978年に施行しました。

権力掌握と独裁

1977年に前大統領のモディボ・ケイタが拘禁中に死亡すると、トラオレ政権は葬儀への参列者を弾圧し、多数の逮捕者を出しました。1978年には、クーデターを企てたとして警察長官や防衛大臣を逮捕する一方で、歴史家のアルファ・ウマル・コナレをスポーツ文化相に任命するなど、政治的開放への試みも見られました。

1979年、トラオレは唯一の合法政党としてマリ人民民主同盟 (UDPM)を設立し、女性や若者向けの組織を義務化しました。軍事政権の長としての国家元首職を廃止し、正式に民政政府の大統領に就任しました。1980年には学生デモが発生し、リーダーが拷問の末に死亡する事件も起きています。1982年には軍の最高司令官に就任し、1988年から1989年までアフリカ統一機構の議長を務めました。UDPMが支配する議会は1985年に憲法を改正し、大統領の任期制限を撤廃、トラオレは終身大統領となりました。

民主化と失脚

1990年、民主化を求める動きが活発化し、民主化主導全国会議（CNID）やマリ民主同盟（ADEMA）などの政党が設立されました。これらの政党は、学生や人権団体と共にトラオレ政権に対抗しました。1991年3月22日、民衆蜂起が発生し、4日後の軍事クーデターによってトラオレは失脚しました。

その後

1992年、トラオレは政治犯として死刑判決を受けました。さらに1999年、経済犯罪でも再び死刑判決を受けましたが、後に無期懲役に減刑され、2002年には恩赦により釈放されました。その後、かつての支持者たちは愛国復興運動（MPR）を結成しました。

2020年9月15日、首都バマコで死去しました。

ムーサ・トラオレの生涯は、マリの激動の歴史を象徴するものと言えるでしょう。

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