メアリー・ド・ブーン

メアリー・ド・ブーン：短い生涯、偉大な遺産

メアリー・ド・ブーン（Mary de Bohun, 1368年頃 - 1394年6月4日）は、イングランド王ヘンリー4世の最初の妻であり、後のヘンリー5世の母として歴史に名を残しています。しかし、彼女は夫が王位に就く前に、26歳という若さで出産時の事故により亡くなったため、王妃の座に就くことはありませんでした。

生い立ちと結婚

メアリーは、第7代ヘレフォード伯ハンフリー・ド・ブーンと、第10代アランデル伯リチャード・フィッツアランの娘ジョアンの間に生まれました。彼女の家系は、スコットランド王位を主張したハンフリー・ド・ブーン4世や、エドワード1世の王女エリザベス・オブ・リズランといった人物を含み、由緒あるものでした。また、姉のエレノアは、エドワード3世の末子であるグロスター公トマス・オブ・ウッドストックと結婚しており、王室との繋がりも深いものでした。

ブーン家には男子がいなかったため、メアリーと姉のエレノアが共同相続人となりました。グロスター公は相続を独占しようと企み、メアリーを尼僧院に入れようとしました。しかし、母ジョアンは幼い娘の身を案じ、ランカスター公ジョン・オブ・ゴーントに相談しました。その結果、1380年にランカスター公の長男ヘンリー・ボリングブルック（後のヘンリー4世）とメアリーは結婚することになったのです。

ヘンリー4世との結婚生活

ヘンリーとの結婚後、メアリーは多くの子を産み育てました。その中には、イングランド王として百年戦争を戦い抜いた英雄、ヘンリー5世も含まれています。しかし、1394年、メアリーは26歳という若さで亡くなってしまいます。彼女の死から5年後の1399年、夫ヘンリーはリチャード2世を廃位してヘンリー4世として即位しました。その後、ヘンリー4世はジョーン・オブ・ナヴァールと再婚し、彼女が王妃となりました。

子女

メアリーは、ヘンリー4世との間に以下の子をもうけました。

エドワード（1382年） - 早世
ヘンリー5世（1387年 - 1422年） - イングランド王
トマス（1388年 - 1421年） - クラレンス公
ジョン（1389年 - 1435年） - ベッドフォード公
ハンフリー（1390年 - 1447年） - グロスター公
ブランシュ（1392年 - 1409年） - プファルツ選帝侯ルートヴィヒ3世と結婚
フィリッパ（1394年 - 1430年） - デンマーク・スウェーデン・ノルウェー王エーリク7世と結婚

遺産

メアリー・ド・ブーンは、短い生涯でしたが、イングランド史において重要な役割を果たしました。彼女はヘンリー5世の母として、ランカスター朝の礎を築いた一人と言えるでしょう。若くして亡くなった彼女は王妃となることはありませんでしたが、その血筋は後のイングランド王室に大きな影響を与え続けたのです。

参考文献

Alison Weir, Britain's Royal Families, Vintage, 2008
* 石原孝哉 『ヘンリー五世 - 万人に愛された王か、冷酷な侵略者か』明石書店、2019年

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