メカニカルパズル

メカニカルパズルとは

メカニカルパズルは、特定の道具や機構を用いて解くことを目的としたパズルの総称です。これらのパズルは、その構造や解法において、知恵やひらめきを必要とします。単純な形から複雑なものまで多岐にわたり、古くから世界中で愛されてきました。

メカニカルパズルの歴史

メカニカルパズルの歴史は非常に古く、紀元前5世紀頃の古代ギリシアやフェニキアには、すでに「パズルの壷」と呼ばれるものが存在していました。これは、特定の機構によって液体をこぼさずに飲むことを目的とした、一種のトリック器具でした。また、紀元前3世紀頃のギリシアでは、正方形を14片に分割して図形を作る「ストマッキオン」というシルエットパズルがありました。

17世紀以前には、インドやイラン周辺地域で「パズル錠」が作られていたとされています。日本では、1742年に刊行された書物に「清少納言知恵の板」に関する記述があり、中国では1813年にタングラムに関する本が出版されています。タングラムはその後欧米にも広まり、リヒター社が「アンカーパズル」として製造・販売しました。

1880年頃には、アメリカで15パズルが誕生し、サム・ロイドの考案した問題と共に広く知られるようになりました。1893年には、ホフマン教授が著書“Puzzles Old and New”を刊行し、40種類の「開けるパズル」を含む多くのパズルを紹介しました。この著書は現在でもパズル研究者に大きな影響を与えています。

20世紀初頭には、パズルが大流行しました。オランダのW.アルテクルーズは、1890年に同じ形の12個のピースを使用した組木で特許を取得しています。これは、パズルにおける最初の特許とされています。

プラスチックなどの加工しやすい素材の普及により、メカニカルパズルの制作はより自由になり、ルービックキューブのような複雑なパズルも誕生しました。

メカニカルパズルの分類

メカニカルパズルは、その構造や解法によっていくつかのカテゴリに分類されます。

組み合わせパズル

複数の部品を組み合わせて、指定された形や図形を作るパズルです。ペントミノ、ソーマキューブ、タングラムなどが代表例です。また、与えられた部品を箱に詰め込むパズルもこのカテゴリに含まれます。レーザー加工機などの利用により、複雑な形状や装飾を持つパズルも増えています。コンピュータを設計に利用することで、解の有無や個数を短時間で調べられるため、より難解なパズルも作られています。

開けるパズル

箱や容器を開けることを目的としたパズルです。開けるための手順や仕掛けが複雑なものが多く、試行錯誤が必要となる場合があります。

外して組むパズル

複数の部品が組み合わさった状態から、それらを一度分解し、再度組み立てるパズルです。組木が代表的で、分解の難易度が高いものが多いです。組木の難易度は、最初の1片を外すまでにかかる手数で表され、ビル・カトラーによって「レベル」として定義されています。コンピュータ解析により、組木パターンの数は膨大であることが明らかになっています。

ほどくパズル

絡まった針金などから特定の部品を外すパズルです。知恵の輪が代表的で、トポロジーの考え方が重要になる場合もあります。Vexierやチャイニーズリングなどが有名です。

折りたたむパズル

紙などを折りたたんで特定の形や図を作るパズルです。ルービックマジックや、地図などを折りたたむパズルが代表的です。折り方がわかっていても、元通りに折り直すのは難しい場合があります。

パズル錠

錠前のような形状をしたパズルです。鍵を使わずに開ける方法を探す必要があります。

パズルの壷

特殊な構造を持ち、液体をこぼさずに飲むことを目的とした壷です。古代ギリシアやフェニキアで使われていた記録があり、パズルジョッキなどがその例です。

不可能物体

一見するとどのように作成されたか理解できない物体です。ボトルシップや、瓶に刺さった矢などがその例です。同様のものを制作することや、作成方法を解明することが目的となります。

手先のパズル

手先の器用さが重要なパズルです。箱を傾けて中のものを動かすパズルや、けん玉などが該当します。

一連の動きのパズル

規定の操作を繰り返して目的の状態にするパズルです。ハノイの塔、ルービックキューブ、15パズルなどが該当します。

メカニカルパズルのコレクション

メカニカルパズルの世界には、熱心なコレクターが数多く存在します。世界最大のコレクションはイギリスの個人コレクションで、50,000個を超えるパズルを所蔵しているとされています。アメリカのジェリー・スローカムは、パズル研究家としても知られ、彼のコレクションは「スローカム・コレクション」としてインディアナ大学に開設されています。

メカニカルパズルの魅力

メカニカルパズルは、その多様性と奥深さから多くの人々を魅了しています。単なる暇つぶしではなく、思考力、空間認識能力、そして忍耐力を養うことができる知的な玩具です。歴史と文化を感じさせるとともに、新たなパズルが日々開発されており、その魅力は尽きることがありません。

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