メガマウス

メガマウスザメ:深海の謎に包まれた巨大なサメ



メガマウスザメ ( Megachasma pelagios) は、ネズミザメ目に属する深海性のサメです。その巨大な口と、プランクトン食という独特の生態から、多くの謎に包まれた存在として知られています。本種のみでメガマウスザメ属を構成し、ミツクリザメと共にネズミザメ目の中で特に原始的な形態を残していると考えられています。

分布と生息域



メガマウスザメは、太平洋インド洋熱帯から温帯域に広く分布しており、水深約200メートル深海に生息しています。日本近海では比較的多くの目撃例や捕獲例があり、全世界での発見例においても高い割合を占めています。東京湾周辺の海底谷や沖合でも発見されており、日本はメガマウスザメ研究において重要な地域となっています。

形態



最大で全長7メートルにも達する巨大なサメです。その特徴的な大きな口は、プランクトンを効率的に濾過するための特殊な構造を持っています。北海道大学の研究によると、顎の骨に付着する筋肉と柔軟な皮膚が協調することで、口を大きく突き出して開口するという、他のサメには見られない独特の摂餌方法が明らかになっています。このメカニズムは、ヒゲクジラ類の濾過摂食様式と類似性があると言われています。

メガマウスザメはプランクトンを主食とするため、歯は小さくヤスリ状の列になっています。口の内壁は光を受けると銀色に輝き、上顎の歯は蛍光色に光るという報告もありますが、その機能については未だ解明されていません。骨格の大部分は軟骨で構成されており、世界初の全身骨格標本は鴨川シーワールドで展示されています。

生態



メガマウスザメは主にプランクトンを食べており、昼間は水深100~200メートルに生息し、夜間になると浅海域に浮上すると考えられています。腹部が白いことから、深海魚に見られるカウンターシェーディング(背側は暗色、腹側は淡色になる体色)は持たない可能性が示唆されています。

繁殖様式は胎生と考えられていましたが、2018年の鴨川シーワールドでの公開解剖で、5.4メートルメスの個体から卵殻が発見されました。これはメガマウスザメにおいて初めての卵殻確認であり、生殖様式に関する新たな知見をもたらしました。さらに、2023年にはフィリピンで妊娠したメス個体が発見され、体長約5.5メートルの個体が1.65~1.84メートルの胎児を7匹妊娠していることが確認されました。

発見の歴史と未解明な点



メガマウスザメが最初に発見されたのは1976年、ハワイ沖でアメリカ海軍の調査船がそのシーアンカーに絡まった個体でした。その後は数年に一度の発見という稀少性から「幻のサメ」と呼ばれてきました。日本での最初の発見は1989年、静岡県での浜辺への打ち上げ個体でした。

深海に生息し、大型であることから、ダルマザメによる食害痕や寄生性カイアシ類の付着が見られるなど、深海環境での生存を示す証拠が見つかっています。また、2015年には沖縄本島で約1000万年前から300万年前の歯の化石が発見され、アジア地域における初の公式記録となりました。肉質は水っぽく食用には適さないとされています。

日本における主な捕獲記録



日本においては、1989年の静岡県での最初の発見以降、多くの捕獲例が報告されています。これらの記録は、メガマウスザメの生態や分布を理解する上で貴重なデータとなっています。捕獲された個体は、水族館などで標本として展示されたり、研究機関で詳細な調査が行われたりしています。 いくつかの事例では、生きたまま捕獲されたものの、その後死亡したり、逃亡したりといったケースも報告されており、その生態の解明は今後の課題です。

まとめ



メガマウスザメは、その特異な生態や形態から、未だ多くの謎に包まれたサメです。しかし、近年における研究の進展や、世界各地での発見例増加により、少しずつその生態が明らかになりつつあります。今後の研究により、この深海の巨大なサメの謎が解き明かされることに期待が高まります。

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