海底谷

海底谷とは

海底谷（かいていこく）は、海底の大陸斜面に位置する渓谷の一種であり、一般的には大陸から流れ出る大河川が海底に延びた結果、形成されます。この構造物は、最大で数百キロメートルの長さを持ち、深さが1キロメートルに及ぶこともあります。

成因についての歴史

1960年代までは、海底谷の形成に関する理論として「沈水説」が広く受け入れられていました。この説では、海面が現在よりも低かった時代に、大陸棚の端に河川が流出し、その結果として海底に渓谷が形成されたとされます。この考えは、氷期の海面が低かった時代に、その影響で多くの渓谷が発見されることから多少の支持を受けていました。しかし、この仮説には限界があり、特に海面下3,000メートルにも確認される海底谷については、その成因を説明するのが難しいとされています。地球の大陸形成史における海面の高さの変動は、数千メートルには達しないと考えられているからです。

一方で、星野通平らによる「地球膨張説」も提唱されています。これは、白亜紀以降に地球が膨張し、その結果海面が上昇したとする仮説であり、主流の見方ではありません。

乱泥流による形成

1970年代以降、海底谷の形成に関して「乱泥流説」がより支持されるようになりました。この説は、海底での地すべりや地震といった自然現象によって発生する乱泥流、いわゆるタービダイトによって、海底の侵食作用が行われ、谷が形成されるというものです。濃密な堆積物は、地震などの刺激によって流れ落ち、大陸棚を削り取った結果、海底谷が形成されるのです。

ただし、堆積物の重力流だけが海底谷の本質的な成因であるとすることには疑問を呈する研究者もいます。例えば、富山深海長谷などは乱泥流による構造であると考えられていますが、他の形成要因も考慮すべきだという意見があります。

海底谷の具体例

海底谷の例としては、アメリカのアリューシャン海溝、地中海の「ストロンボリ谷」、南アフリカの「ケープ谷」などが挙げられます。それぞれの海底谷は、地形的および環境的に非常に異なる特徴を持ち、さまざまな生態系が形成される重要な場所でもあります。また、これらの地域は漁業などの経済活動にとっても重要な位置を占めています。

まとめ

海底谷は、地球上の海底における魅力的な地貌の一つであり、その成因や特徴は科学的な観点からも多くの謎に包まれています。これまでの研究を通じて、沈水説や乱泥流説など、さまざまな理論が提唱されてきましたが、今後更なる研究が進むことで新しい知見が得られることが期待されています。

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