メタルヘッド

『メタルヘッド』は、高平鳴海によって制作されたテーブルトークRPG（TRPG）のタイトルです。ジャンルはサイバーパンクで、1990年にシリーズ第一弾が発売されて以来、何度かのバージョンアップを経て現在に至ります。全シリーズを通して、カバーイラストは米村孝一郎が担当しています。

概要

『メタルヘッド』は、日本のTRPGにおいて「サイバーパンク」というジャンルを本格的に扱った初期のタイトルです。その世界観は、高度に文明化された都市部と、旧世紀の文明が破壊された荒野という、二つの極端な環境が特徴です。この設定は、ウィリアム・ギブスンやブルース・スターリングが描くような、機械と人間の融合による社会変革というサイバーパンクの要素に加え、映画『マッドマックス』や漫画『北斗の拳』、ゲーム『メタルマックス』のような、荒廃した近未来を描くアフターホロコーストの雰囲気も持ち合わせています。

もちろん、伝統的なサイバーパンクのシナリオも楽しめますが、特徴的なのは「倒壊した旧世紀のビルが立ち並ぶ荒野で、パワードスーツや重火器で武装した山賊を、同じように武装したプレイヤーキャラクターが用心棒として退治する」といった、西部劇のような展開がスタンダードなシナリオの一つとなっている点です。そのため、『メタルヘッド』シリーズは、サイバーパンクではなく「サイバーアクション」というジャンル名で呼ばれることもあります。

システム

d20システム版以外のシリーズ全作に共通するシステム要素は以下の通りです。

キャラクターメイキング

プレイヤーキャラクターは、自身の専門分野を表すキャラクタークラスを選択し、能力値や技能値を割り振ることで作成されます。キャラクタークラスの詳細については、後述の一覧を参照してください。

行為判定

行為判定は、パーセンテージロールに基づいた下方判定を基本としています。各キャラクターには、技能判定の成功率が1〜100の範囲で設定されており、パーセンテージロールでその数値以下の値が出れば、技能を使った行為判定は成功とみなされます。また、能力値判定では、2D6と能力値の合計が判定値以上であれば成功とする方式も用いられることがあります。

戦闘ルール

戦闘ルールは、従来のRPGのようなヒットポイントを削り合う形式とは異なり、「腕が使えなくなった」「死亡した」「装甲により攻撃が無効化された」といった具体的な損傷が、攻撃のたびに直接適用される点が特徴です。攻撃には命中部位が存在し、命中判定やダメージ判定の中でランダムに決定されます。損傷効果は部位ごとに異なり、パワードスーツや武装車両といったメカ同士の戦闘でも同様のルールが適用されます。メカの場合、命中部位は「本体部分」「パワープラント部」「エンジン部」などに分かれます。人間とメカが同じルールで扱われることで、生身の人間が大型メカ同士の戦闘シーンに簡単に参加でき、「サイボーグ化された怪力の男」といったキャラクターが活躍できる、メタルヘッドならではのシステムとなっています。

世界設定

『メタルヘッド』の世界は、22世紀中ごろの地球です。具体的な年代はシリーズによって異なりますが、数十年程度の差であり、文明レベルに大きな変化はありません。過去の戦争や環境破壊によって国家は解体され、地球は汚染されています。人類の多くは、各地に建設された「メガシティ」と呼ばれる巨大都市に引きこもって暮らしています。メガシティは、高度なコンピュータ化された科学文明によって守られた未来都市ですが、行政は大企業によって行われているため、貧富の差が激しく、富める者にとっては楽園、貧しい者にとっては地獄のような世界です。

メガシティ以外の場所には荒野が広がっており、廃棄された旧文明（20世紀、21世紀）の町も点在しています。荒野はメガシティに比べて自由なフロンティアであり、新たな開拓者たちが小さな街や村を築いています。しかし、自由である反面、弱肉強食の世界であり、機械武装した野盗（バンデッド）などのならず者たちが跋扈しています。

このような世界で、プレイヤーキャラクターたちは「ハンター」と呼ばれるトラブルシューターとして活動します。ハンターは、金さえもらえば何でもこなす何でも屋であり、世界規模のネットワークを持つ互助組織「ハンター協会（ハンターズギルド）」に所属しています。協会には、戦闘、メカニック、調査、交渉など、様々な分野のプロフェッショナルが集まっており、依頼に応じてチームを組んで任務を遂行します。ハンターには実力があれば誰でもなることができ、一流のハンターとなれば莫大な収入と社会的名声を得ることができます。弱肉強食の世界で成り上がるための手段として、人気のある職業です。

シリーズごとの特徴

メタルヘッド

1990年にホビージャパンから発売されたシリーズ第一弾。ゲームデザインは高平鳴海とチームアガルタ。2150年代の地球を舞台に、ファンタジーRPG的なプレイスタイルを可能にするため、世界観やシステムが工夫されています。プレイヤーキャラクターは、ファンタジー世界の冒険者の代わりにハンターとなり、銃火器やサイバーパーツを身につけ、野盗を退治し、20世紀文明の遺跡を探索します。

メタルヘッド・マキシマム

2000年にゲーム・フィールドから発売されたシリーズ第二弾。ゲームデザインは高平鳴海とファーイースト・アミューズメント・リサーチ。『無印』のエッセンスを受け継ぎつつ、ルールを簡略化。基本ルールブックは、『無印』の全製品のルールとデータをまとめなおし、取捨選択して一冊にしたものです。舞台は『無印』から10年後の2160年代。都市、荒野に続く第三勢力として「月世界」が登場し、オーバーテクノロジー「パンドラ」が世界のバランスを揺るがします。

メタルヘッド Frontier 2150／d20 エディション

2008年3月にホビージャパンから発売されたd20システム版。ゲームデザインは高平鳴海。世界観は『無印』を踏襲。d20モダンをベースとしていますが、独自ルールも採用されており、他のd20システムとの互換性はありません。

メタルヘッド・エクストリーム

2008年5月に新紀元社から発売されたシリーズ第三弾。ゲームデザインは高平鳴海とファーイースト・アミューズメント・リサーチ。舞台は『マキシマム』からさらに10年後の2170年代。ハンターギルドから離反した新組織「ヴェーダ」が登場し、ハンターVSヴェーダの戦争が勃発。マスコンバット（集団戦闘）のルールが新たに加わっています。旧作のシナリオやサプリメントの記述を取り入れ、d20版も参考に、システム面が改善されています。

キャラクタークラス一覧

ランドブラスター: メカニック操縦の専門家
ロードラッシャー: ドライビングテクニックのみで任務をこなす逃がし屋
ブロックバスター: 人型メカニック「コンバットシェル」の専門家
ネットライナー: ハッカー、コンピュータネットワークのエキスパート
ハスラー: トレジャーハンター、何でも屋
ブローカー: ハンターに仕事を斡旋する交渉人
イノセント: 超能力の素質を持つ者
アンダーカバー: 企業工作員

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