メタンチオール

メタンチオールについて

メタンチオール（methanethiol）は、化学式CH₃SHで表されるチオールの一種で、別名メチルメルカプタンとも呼ばれています。この化合物は無色の気体で、特徴的な腐ったタマネギのような強い臭いを放つことで知られています。メタンチオールは、自然界においては特定の種実類やチーズ、動物の血液や脳などの組織に微量が存在しています。また、動物の排泄物からも発生し、口臭や腸内ガスの悪臭の一因ともされています。

発生源

メタンチオールは、主に沼地における有機物の腐敗過程によって生成されます。これに加え、コールタールや原油、いくつかの地域の天然ガスにも含まれています。海洋では、ジメチルスルホニオプロピオナート（DMSP）が藻類によって代謝される過程で生成される一次産物の一つでもあります。海水中におけるメタンチオールの濃度は非常に低く、硫酸イオンに比べてわずかしか存在しませんが、海洋バクテリアはDMSPを分解することでメタンチオールを利用して硫黄を取り込む重要な役割を果たしています。

好気条件と嫌気条件の両方において、バクテリアはメタンチオールをジメチルスルフィド（DMS）に変換することができますが、海水中のDMSの多くは他の経路によって生成されています。メタンチオールとDMSは、双方とも嫌気条件下での微生物のメタン生成過程で重要な役割を果たします。また、メチオニンからも生成され、一部の乳酸菌や酵母、キノコによっても合成されます。驚くべきことに、メタンチオールの嗅覚閾値は極めて低く、0.02ppbに達します。チーズにわずかな量のメタンチオールが含まれることで、その香りが特徴づけられることもあります。

用途

メタンチオールは、プラスチック工業や殺虫剤の原料として広く使用されています。また、パルプ製造過程においては、木材の腐敗生成物として自然に発生します。チオール類はごくわずかの存在でも非常に強い悪臭を発揮するため、無臭のガス製品に添加して漏れを検知しやすくするための付臭剤としても利用されます。

事件

2005年12月26日には、ロシア・サンクトペテルブルクの小売店マキシドムで、メタンチオールと思われるガスが放出される事件が起きました。店舗には「クリスマスの際の営業を妨げる」といった内容の脅迫状が届き、同じチェーンの他の店舗でもタイマーでガスを放出する仕掛けが施されたガラス容器が発見される事態となりました。この事件は、メタンチオールの危険性と、思わぬ場面での利用が潜んでいることを示しています。

参考文献

関連項目には、エタンチオールが挙げられます。

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