メトディオス (スラヴの（亜）使徒)

メトディオス（815年 - 885年4月6日）は、東ローマ帝国の知識人であり、キリスト教の聖職者、モラヴィアの主教（司教）です。弟のキュリロスと共にスラヴ地域へのキリスト教布教に尽力し、正教会、カトリック教会、聖公会、ルーテル教会で聖人とされています。

生涯

メトディオスは、テサロニケ（テッサロニキ）の軍人の家庭に生まれました。862年、モラヴィア王国のラスチスラフが東ローマ帝国にキリスト教の伝道師派遣を要請したことが、彼の生涯の転機となります。当時モラヴィアは、フランク王国の影響力を脱し、キリスト教国との関係を強化しようとしていました。

この要請に応え、東ローマ帝国は文献学者であり神学者であったコンスタンティノス（修道名キュリロス）と、その兄メトディオスをモラヴィアに派遣します。彼らは現地語での伝道を重視し、当時文字を持たなかったスラヴ語のために、キュリロスがグラゴール文字を創り出しました。そして、聖書と典礼書の翻訳を行い、新約聖書と詩篇を最初に翻訳し、旧約聖書の他の部分を翻訳したと推測されています。

しかし、彼らの活動はフランク王国の影響下にあるザルツブルク大司教配下の宣教師との対立を引き起こします。ザルツブルクの宣教師たちは、典礼言語はラテン語かギリシア語であるべきと主張し、スラヴ語での典礼を非難しました。この問題を解決するため、メトディオスとキュリロスは867年にローマに招かれ、教皇アドリアヌス2世は彼らの学識と温和な人柄に感銘を受け、スラヴ語での典礼を公式に認め、モラヴィアでの伝道活動を承認しました。

ローマ滞在中の869年2月にキュリロスが病没した後、メトディオスは弟子たちと共にスラヴ地域に戻り、未訳だった典礼書の翻訳と伝道活動を続けました。しかし、政治情勢の変化により、メトディオスを招いたラスチスラフが甥によって王位を追われたため、モラヴィアではなくパンノニアで活動することになります。パンノニアもザルツブルク大司教の管轄下にあったため、ドイツ人宣教師との間に緊張が生じましたが、メトディオスはローマの支援を得てシルミウム大司教に任命され、パンノニア司教の地位が廃止されました。教皇ヨハネス8世はメトディオスを「モラヴィア・パンノニア・セルビアの大司教」に任命したとされています。

しかし、大司教に任じられた後も、メトディオスとラテン典礼を奉じるドイツ系聖職者、そしてその後ろ盾である東フランク王国との間の緊張は続きました。彼らはラテン語典礼を主張し、スラヴ語典礼を禁じようとしました。メトディオスは2年半の間投獄されたり、大司教の地位を追われたりしました。この対立にはフィリオクェ問題も絡んでおり、フランク王国がニカイア・コンスタンティノポリス信条に「フィリオクェ」の句を付け加えたことに対し、メトディオスは受け入れることができませんでした。ローマは当時「フィリオクェ」を付加していなかったため、メトディオスはローマの支持を得ることができましたが、ヨハネス8世の死後、彼の地位は不安定になりました。

メトディオスの死後、後継者に指名されたゴラヅは教皇ステファヌス5世によって承認されず、メトディオスの弟子たちはモラヴィアから追放されました。これによりモラヴィアはラテン教会に帰属することになります。メトディオスの弟子たちはブルガリア帝国に移り、宣教活動を続けました。その中にはオフリドのクリメントがいました。

崇敬

メトディオスは、弟キュリロスと共に、早くから正教会の聖人とされ、19世紀にはカトリック教会の聖人にも列せられました。スロバキアでは、1993年からユーロ導入までの間、50コルナ紙幣にキュリロスと共に肖像が使用されていました。

外部リンク

亜使徒メフォディイ及びキリルの祭日 (正教会の祈祷書))

もう一度検索