メトネ (衛星)

メトネ (Saturn XXXII Methone) について

メトネは、土星の第32衛星であり、非常に小さな天体です。2004年に土星探査機カッシーニの調査チームによって発見され、その存在が初めて確認されました。この衛星は、付近を公転するパレネと共に、カッシーニが撮影した画像の中から発見された初めての衛星の一つです。

発見と命名

メトネは、カッシーニの画像解析チームによって2004年6月1日に発見されました。同年8月16日に国際天文学連合によって発見が公表され、当初は仮符号S/2004 S 1が与えられました。

発見当初、この天体は1981年にボイジャー2号によって発見が報告されたS/1981 S 14と同一天体である可能性も指摘されましたが、詳細な調査の結果、別の天体であることが判明しました。S/1981 S 14は後にパレネと命名されています。

メトネという名前は、ギリシア神話に登場する巨人アルキオネウスの7人の娘たち（アルキオニデス）の一人に由来しており、2005年1月21日に国際天文学連合のワーキンググループによって正式に命名されました。同時に、土星の32番目の衛星であることを示すSaturn XXXIIという確定番号も与えられました。

軌道

メトネは、ミマスより外側、エンケラドゥスより内側の軌道を公転しています。その軌道はほぼ真円に近く、この領域にはメトネを含めて3つの小さな衛星（パレネとアンテ）が存在します。これらの衛星は、いずれもアルキオニデスに由来する名前が付けられており、その起源については、ミマスやエンケラドゥスから分離したという説や、初期の小衛星群の生き残りであるという説があります。

メトネはミマスとの14:15の平均経度の共鳴を起こしており、この共鳴によって軌道に擾乱が生じています。その結果、メトネの軌道要素には大きな変動が見られ、軌道長半径は約20km、近点経度は約5°の振幅で振動しています。これらの振動は約450日の周期で発生しています。また、軌道離心率は0.0011から0.0037の間、軌道傾斜角は0.003°から0.020°の間で変動していることも確認されています。

物理的特徴

2012年5月20日、カッシーニはメトネに接近し、その表面の詳細な観測を行いました。観測の結果、メトネは非常に滑らかな表面を持つ楕円体状の天体であり、検出可能な大きさのクレーターはほとんど見られないことが明らかになりました。パレネやアイガイオンも同様に滑らかな表面を持つと考えられています。

メトネの表面は、アルベドの異なる2つの領域に明確に分かれています。明るい領域はアルベドが約0.70であるのに対し、暗い領域は約0.61と、13%ほど低い値を示しています。暗い領域の中で最もアルベドが低い場所では0.58という値が観測されています。興味深いことに、暗い領域はメトネの公転方向に対して先行する側の表面に位置しています。

紫外線や赤外線のスペクトルでは、この2つの領域の明るさに違いは見られず、組成による色の違いではなく、物理的な要因による可能性が示唆されています。例えば、ミマスやテティスの先行半球で見られる熱的な異常は、土星の磁気圏に由来する電子の衝突頻度が高くなることが原因であるという仮説があります。この同様の現象が、メトネのアルベドパターンにも影響を与えている可能性があります。

メトネが静水圧平衡の状態にあると仮定すると、その密度は約0.31 g/cm³と推定されます。これは、太陽系の天体の中でも非常に低い密度の一つであり、メトネが非常に空隙率の高い氷でできていることを示唆しています。空隙率の高い内部構造を持つことで、構成物質が大きく移動できるため、クレーターが形成されにくい可能性も考えられます。

土星の環との関係

2006年、カッシーニの観測により、土星の新たな環が発見され、R/2006 S 5という仮符号が与えられました。この環は、翌2007年に撮影された画像によってメトネの周辺軌道上に位置する弧状の環として確認され、2008年に正式にメトネ・アークと命名されました。この環は、微小隕石の衝突によってメトネから放出された物質が形成したと考えられています。

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