メルセデス・ベンツ・OM642エンジン

メルセデス・ベンツOM642エンジン：コンパクト設計と高性能の融合

メルセデス・ベンツが2005年に発表したOM642型エンジンは、同社のV型6気筒ディーゼルエンジンの代表格です。従来の直列型エンジンに代わる革新的な設計思想に基づき開発され、CクラスからSクラスといった幅広い車種に搭載されました。北米市場でも高い評価を受け、2007年と2008年には「Ward's 10 Best Engines」に選出されています。

コンパクト設計の追求：ワンボックスコンセプト

OM642型エンジンの最大の特徴は、そのコンパクトな設計です。メルセデス・ベンツは、エンジン全体の形状を可能な限り立方体に近づける「ワンボックスコンセプト」を採用しました。この設計により、エンジンルーム内のスペース効率が大幅に向上し、車両パッケージングの自由度が高まりました。

具体的には、クランクシャフトは4ベアリング構成、バンク角は72度とし、左右のバンク間に吸気系やターボチャージャーなどの補機類を効率的に配置。さらに、DOHC4バルブの動弁系にはローラーロッカーフォロワーを使用することで、コンパクトながらも高い信頼性を実現しました。カムシャフト駆動機構もチェーンとギアを組み合わせた効率的なシステムを採用しています。

高性能を実現する先進技術

OM642型エンジンは、高圧噴射による優れた燃焼効率も特徴です。最大噴射圧力1600barのボッシュ社製第3世代ピエゾ式インジェクターによるコモンレール直噴システムを採用。これにより、1回の燃焼あたり最大5回の噴射が可能となり、きめ細やかな燃料制御を実現しています。

排出ガス対策においても、OM642型エンジンは時代の先端を行っていました。重量車には尿素SCRシステムであるBlueTEC、軽量車にはNOx吸蔵還元触媒を採用することで、排出ガス規制をクリアしています。2008年モデルからは、平成17年排出ガス規制（新長期規制）にも適合しました。

高出力と高トルク：幅広い車種への搭載

OM642型エンジンは、その高い出力とトルク特性も魅力です。最も高出力な仕様では、最大出力195kW、最大トルク620Nmを達成しています。CクラスからSクラスまでの幅広い車種に搭載され、メルセデス・ベンツの様々なモデルにその性能を提供しました。

生産拠点と歴史

OM642型エンジンは、ドイツ・ベルリンの工場で生産されました。ダイムラー・クライスラー時代のエンジンであり、クライスラー車への搭載実績もあります。その信頼性と性能から、長年にわたってメルセデス・ベンツ車の心臓部として活躍しました。

まとめ

OM642型エンジンは、コンパクトな設計、高性能、そして環境への配慮をバランス良く融合させた傑作エンジンと言えるでしょう。ワンボックスコンセプトや高圧噴射技術など、その革新的な技術は、後のディーゼルエンジン開発にも大きな影響を与えました。このエンジンは、メルセデス・ベンツの技術力の高さを示す象徴的な存在と言えるでしょう。

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