メルセデス・ベンツ・W126

メルセデス・ベンツW126：不動の高級車としての地位を確立したSクラスの傑作

メルセデス・ベンツSクラスは、世界中の富裕層から長年愛され続けている高級車の代表格です。その高い価格に見合うだけの品質、信頼性、そして安全性は、まさに「最高の道具」と称されるにふさわしいものです。そして、その評価を不動のものとしたのが、1979年から1991年まで製造された2代目モデル、W126です。

W126は、歴代Sクラスの中でも最も販売台数の多いモデルであり、その人気は日本でも例外ではありません。バブル経済期と重なった発売時期も、その成功に大きく貢献しました。セダンとクーペ（SEC、C126）を合わせた世界累計販売台数は89万2,123台にものぼり、その人気ぶりがわかります。

革新的な技術と安全性の追求

W126は、単なる高級車ではありませんでした。当時としては最先端の技術が惜しみなく投入され、安全性と快適性が大幅に向上しました。

まず、空力性能の向上は目覚ましく、空気抵抗係数は先代のW116と比べて約14％も低減されました。これは、当時の高級車としては非常に優れた数値です。さらに、ボディデザインにも空力的な工夫が凝らされており、高速走行時の安定性も向上しています。

安全面では、上級モデルにはエアバッグ（運転席、ファイナルモデルでは助手席も）やトラクションコントロールシステム（TCS）、アンチロックブレーキシステム（ABS）が標準装備されました。また、セルフレベリングサスペンションやハイドロニューマチック・サスペンション（オプション）なども、快適な乗り心地と高い安全性に貢献しています。

洗練された内外装

W126の内外装は、シンプルながらも高級感あふれるデザインが特徴です。ダッシュボードの設計やスイッチ類の配置は、使いやすさと操作ミス防止を最優先に考えられており、過剰な装飾は一切ありません。

内装は、上質な素材が使用され、快適なシートやパワーシート（メモリー機能付きモデルもあり）も装備されています。ステアリングは、初期型では大型のものが採用され、パワーステアリング故障時にも操作性を確保していました。

外装では、樹脂製の一体成型バンパーやボディサイドプロテクター（サッコプレート）などが、現代でも新鮮に映るスタイリッシュさを生み出しています。また、視界確保のための工夫も凝っており、大型のレインランネルやメルセデス・ベンツ初となるコンシールドワイパーなどが装備されています。

多様なモデルバリエーションと並行輸入車

W126は、さまざまなエンジンを搭載したモデルがラインナップされていました。日本市場では、280SEから560SEL、さらにはAMGチューニングモデルまで、幅広い選択肢がありました。

また、1980年代には、正規輸入車以外に並行輸入車が数多く存在しました。これは、排出ガス規制の違いや、正規輸入が一部のモデルに限られていたことが主な原因です。しかし、並行輸入車は、日本仕様に合わせていないため、オーバーヒートや部品の互換性、エアコン性能などの問題を抱えている場合もありました。

特別な存在感と、その後の影響

W126は、日本の政財界の大物や著名人、そしてF1ドライバーにも人気があり、多くの愛好家が存在しました。その存在感は、当時の社会情勢を反映し、日本の高度経済成長期の象徴的なモデルとして記憶されています。

W126は、その優れた走行性能、安全性、快適性、そして洗練されたデザインにより、メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルとしての地位を確固たるものにしました。そして、後継モデルであるW140へと続く、Sクラスの歴史において、最も重要なモデルの一つとして今も記憶されています。様々なコーチビルダーによるカスタムモデルも存在し、その人気は現在も高いままです。 リムジンモデルやワゴンモデルなど、個性豊かなバリエーションも存在します。

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