メンパ族

メンパ族：インドとチベットに暮らすチベット系民族

メンパ族は、チベット系民族の一つであり、主にインドのアルナーチャル・プラデーシュ州に居住しています。しかし、彼らの一部は、チベット自治区のメドク、ニンティ、ツォナなどの地域にも暮らしており、その居住地は広範囲に渡ります。

言語と文化

メンパ族は、シナ・[[チベット語族]]チベット・ビルマ語派に属するメンパ語を話します。メンパ語は「ツォナ・メンパ語」と「メトク・メンパ語」の大きく2つの方言に分類され、互いの日常会話は困難です。それぞれの言語は、音声、語彙、文法構造において異なる特徴を持っており、異なる地域社会を反映しています。独自の文字を持たず、チベット文字を使用している点も特徴的です。

彼らの文化は、長年に渡るチベット文化の影響を強く受けています。伝統的には焼畑農業が中心でしたが、現在では常畑農業が主体となり、牧畜や手工芸も生活の重要な部分を担っています。

歴史と人口

メンパ族の起源は古く、西暦800年頃ラサのチョカン寺に建てられた石碑に記された「孟族」が、その祖先であると考えられています。かつてはチベット自治区門隅南部の門隔地区に居住していましたが、約200年前から一部の人々が東へ移動し、現在の居住地へと広がっていきました。

7世紀には吐蕃王国の支配下に、13世紀にはチベットの一部として中国の版図に組み込まれました。封建農奴制度下ではチベット族による支配を受け、経済、宗教、文化など様々な面で影響を受けてきました。

現在、メンパ族の総人口は約4万人と推定されていますが、その大部分は中国・インド国境地帯の東部マクマホン・ライン以南のインド側に居住しています。そのため、中国領内に居住するメンパ族は7498人と、全体のごく一部に留まっています。

宗教

メンパ族は、チベット族と同様にチベット仏教を深く信仰しており、僧侶として出家する人も少なくありません。歴史的にはダライ・ラマ6世ツァンヤンギャムツォなど、著名な高僧を輩出してきたことでも知られています。

中国における自治と民族郷

中国政府は、メンパ族の文化とアイデンティティを保護するため、いくつかの自治区や民族郷を設置しています。ニンティ市巴宜区、ツォナ県などには、更章メンパ民族郷、麻麻メンパ民族郷、貢日メンパ民族郷、吉巴メンパ民族郷、勒メンパ民族郷といった、メンパ族が主体的に暮らす行政区域が存在します。これらの地域では、メンパ族独自の文化や伝統が維持・発展されています。

まとめ

メンパ族は、インドと中国という二つの国にまたがり、独自の言語と文化を維持しながら生活する、歴史と文化の豊かな民族です。彼らの歴史、文化、宗教、そして現在の状況を理解することは、多様な文化が共存する現代社会において非常に重要なことです。今後の研究により、メンパ族に関するさらなる知見が得られることが期待されます。

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