メークローン線

メークローン線：タイのユニークな鉄道路線

メークローン線は、タイ王国中部に位置する、ターチン川によって分断された2つの鉄道路線からなる、特徴的な路線です。正式には、ウォンウィアン・ヤイ＝マハーチャイ線とバーンレーム＝メークローン線として登記されていますが、一般にはそれぞれマハーチャイ線とメークローン線として知られています。この路線は、その歴史的経緯から、タイ国鉄の中でも特異な存在となっています。

歴史

1905年、民営のターチーン鉄道がクローンサーン～マハーチャイ間を開業したのが始まりです。その後、1907年には民営のメークローン鉄道がバーンレーム～メークローン間を開業しました。1908年に両社は合併しましたが、1942年から第二次世界大戦の影響で軍事管理下となり、1946年に国有化されタイ国鉄の一部となりました。

1926年には、クローンサーン～ワットサイ停車場間が電化されましたが、電気設備の維持費や車両の更新費用の問題から1955年に電化は廃止され、現在は気動車によって運行されています。

1961年には、バンコク都内の交通渋滞緩和策としてクローンサーン～ウォンウィアン・ヤイ間が廃止されました。しかし、廃止後も線路は撤去されず、しばらくは車両をマッカサン鉄道工場へ輸送する際に利用されていました。

特徴

メークローン線は、もともと私鉄として設立された路線が国有化された経緯から、タイ国鉄の他の路線とは接続しない飛び地路線となっています。そのため、予算配分や車両に関しても独自性が強く、専用設計された車両が投入されてきました。

また、他の路線と接続がないため、信号機は設置されておらず、安全管理は運行ダイヤと無線交信によって行われています。マハーチャイ線には数ヶ所の交換可能場所がありますが、メークローン線は全線1閉塞となっています。

この路線は、それぞれ30kmほどの短距離路線であり、他の路線からの乗り入れもないため、ダイヤはほぼ正確に守られています。

運行形態と車両

マハーチャイ線（ウォンウィアン・ヤイ～マハーチャイ）とメークローン線（バーンレーム～メークローン）は、ターチン川によって隔てられていますが、連絡船がバーンレーム駅の発着時間に合わせて運行されています。

現在、メークローン線では1日4往復の列車が運行されており、使用される車両は2両編成1本のみです。この列車が故障した場合は、その区間は運休となります。使用されている車両は、タイ国鉄の他の路線で使用されているものと同じですが、2等車扱いのため、運賃が若干割高になっています。バーンレーム～メークローン間の運賃は10バーツで、同じ距離を3等車で利用した場合の8バーツよりも高額です。

現在の車両

THN型: 1102, 1121, 1125, 1140
NKF型: マハーチャイ線: 1201 - 1203, 1205 - 1208, 1211, 1215, 1255, 1260, メークローン線: 1212, 1216, 1221, 1227, 1241
ATR型: 2101 (同線唯一の冷房車)

過去の車両

TEIKOKU型: D3 - D8
NII型: T1 - T3, 1001 - 1003
RTS型: D9 - D16, TS4 - TS7
RH型: メークローン線: 12, マハーチャイ線: 13, 1019
RHN型: メークローン線: 30, 1030, 1044, マハーチャイ線: 27, 1025
NKF型: メークローン線: 1210, 1213, マハーチャイ線: 1204, 1214, 1234, 1248

今後の展望

メークローン線の終着駅であるメークローン駅から、南本線のパークトー駅と接続する計画がありますが、現在のところ実現していません。

2015年には線路補修のため全線で運休となりましたが、現在は営業を再開しています。

まとめ

メークローン線は、そのユニークな歴史と特徴的な運行形態から、タイの鉄道の中でも特別な存在です。地元の人々の生活を支えるとともに、鉄道ファンにとっても魅力的な路線となっています。

参考資料

岡本和之『タイ鉄道旅行』(めこん, 1993)
杉本聖一『魅惑のタイ鉄道』(玉川新聞社, 2000)
柿崎一郎「バンコクの民営鉄道」(アジア研究 Vol.55 No.4, 2009)
柿崎一郎『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』(京都大学学術出版会, 2010)
ฝ่ายการเดินรถ การรถไฟแห่งประเทศไทย. บัญชีรายชื่อสถานี/ที่หยุดรถ/ป้ายหยุดรถ/ระยะทาง/ชั้นสถานี/สังกัด. ม.ป.ท. (ไม่ปรากฏสถานที่พิมพ์), 2553
渡邉乙弘『タイ国鉄4000キロの旅』(文芸社, 2013)

関連項目

タイ国有鉄道
タイの鉄道駅一覧
タイ国有鉄道南本線

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