メーベルワーゲン

メーベルワーゲン (Möbelwagen)

メーベルワーゲンは、第二次世界大戦中においてドイツ軍が使用した対空戦車で、正式な名称は「Flakpanzerkampfwagen IV Möbelwagen」。この名称は、ドイツ語で「家具運搬車」を意味し、その特徴的な設計に由来しています。

歴史的背景

1943年9月、メーベルワーゲンの開発は始まりました。当初は、IV号戦車の車体を基に2cm Flakvierling38を装備する計画でしたが、2cm砲では火力が不十分であることが判明したため、12月には計画が見直され、より強力な3.7cm対空機関砲を搭載する方向に転換されました。クルップ社では、ヒトラーへのプレゼンテーションに向けた新しい設計案を作成しましたが、最終的にはIV号戦車の通常の車体が採用されました。

1944年3月から1945年3月にかけて、ドイツのドイッチェ・アイゼンヴェルケ社によって240輌が生産されました。メーベルワーゲンの車体上部は新規設計され、ボールマウント式の機銃架が排除され、代わりに栓付きの銃眼が設けられました。そのため、砲周囲の装甲板は四方に可動し、射撃時には斜めに開くことができました。このユニークな外見から「家具運搬車」の愛称が付けられました。

設計と仕様

メーベルワーゲンはIV号戦車H型の車体を基にしており、下部前面装甲は80mmと厚さがあります。加えて、回転砲塔を持たないため、砲塔旋回用のエンジンやその排気管が必要ありませんでした。しかし、装甲板の設計は特に注目に値し、最初の20輌は12mmの軟鋼が使用され、続いて10mmの二重装甲が施され、最終的には25mmの単鋼が用いられるようになりました。側面にはピストルポートも設けられ、近接戦闘への対応が考慮されています。

実戦配備と展開

1944年6月、メーベルワーゲンは陸軍の第9、第11、第116装甲師団に配備され、各小隊8輌の体制で西部戦線に投入されました。これに続く16輌は第6、第19装甲師団に提供され、東部戦線に展開されました。多くの装甲兵団に配備されたものの、武装SS部隊で装備したのは第10SS装甲師団のみでした。

当初はクーゲルブリッツやケーリアンなどの本格的な対空戦車の配備までの一時的な措置と見なされていましたが、これらが戦場に間に合わなかったため、メーベルワーゲンは依然として重要な役割を果たしました。生産ペースは月産20輌から30輌に引き上げられ、終戦前々月まで生産が続けられました。

模型と文化的影響

メーベルワーゲンは、模型愛好家の間でも人気があります。1975年にはバンダイから1/48スケールの模型が、1977年にはタミヤからも1/35スケールのミニチュアが発売されました。この結果、一部では「メーベルワーゲン対空戦車は2cm4連装対空機関砲を装備している」という誤解が生じました。

また、1973年にはエーダイグリップから3.7cm Flak43搭載型の量産型も発売されていましたが、こちらはあまり広まることはありませんでした。最後に、タミヤが1999年に再度模型化を行い、メーベルワーゲンの人気を再燃させました。

参考文献

• - Thomas L. Jentz, Hilary Doyle著: PANZER TRACTS No.12 Flak Selbstfahrlafetten and Flakpanzer, Darlington Productions, Inc., 1998
• - Peter Chamberlain, Hilary Doyle著: ENCYCLOPEDIA OF GERMAN TANKS OF WORLD WAR TWO - 大日本絵画, 1986

このように、メーベルワーゲンは戦争の中でユニークな存在感を示し、多くの伝説を生み出しました。

もう一度検索