モスボール (軍事)

モスボールについて

軍事分野における「モスボール」とは、使用しなくなった兵器や機材を、劣化を防ぐための処理を施して保存することを指します。このように保管された機材は、予備として必要に応じて再使用されるほか、部品取りや標的機として活用されることもあります。モスボールは、主にアメリカ合衆国をはじめとする国々で採用されており、その手法は長期的な資源管理の一環として重要な役割を担っています。

語源

「モスボール」という言葉は、1891年に「保管中の衣類から蛾を遠ざけるための防虫剤のボール」を意味する英語から派生しました。この言葉は、物品を使わずに保管しておくことや長期間使用しないことを暗示しています。モスボールの語は、1901年には比喩的な意味で用いられるようになり、1902年には動詞としての用法も定着しました。特に、軍事においてこの用法が目に見える形で現れたのは、1946年のことでした。これは主に第二次世界大戦が終結した後、米海軍が戦後の艦船の扱いについて議論を始めたことによります。

船舶

アメリカでは、軍艦が海軍予備艦隊として保管されている一方、民間船は国防予備船隊としてモスボールされています。これらの艦船は、必要に応じて復帰させたり、他国に売却されたり、あるいは標的として使用されることもあります。たとえば、戦艦「ミズーリ」は1955年に退役後、記念艦として一般公開されていましたが、1986年には再就役しました。

航空機

アメリカのアリゾナ州に位置するデビスモンサン空軍基地には、約4,400機の軍用機がモスボール保管されています。ここには、T-33やB-52、C-130など、多種多様な機体が含まれます。これらの機体は、スクラップとして解体されるか、部品取りとして使用されるか、または標的機として訓練に利用されることがあります。日本の海上自衛隊でも、C-130R輸送機などがモスボール保管されています。モスボールされた機材は、適切に管理されていれば、他国への移譲や民間での利用に供されることもあります。

戦車

ロシアは過去に退役したT-54やT-64戦車を数千両の単位でモスボール保管してきました。2022年のウクライナ侵攻時には、これらの保管していたT-64戦車が前線に投入され、2023年にもT-54戦車が移動されたことが報告されています。

銃器

生産量が多い銃器は、調達コストが保管や生産にかかる費用を上回ることが多く、一定数の保管を経て廃棄処分となるケースもあります。陸上自衛隊では、退役した高射機関砲などを予備装備として保管している事例もあります。

施設

アメリカのシャイアン・マウンテン空軍基地では、2006年から対テロ戦争の一環として機能が移転された後、待機状態を保っています。これは、軍事施設における効率的な管理と資源の最適化を反映していると言えるでしょう。

モスボールは、軍事機材の管理方法として非常に多角的であり、必要に応じて迅速な再運用を可能とする重要な手法です。

もう一度検索