モネの池

モネの池：偶然の芸術と観光の光と影

岐阜県関市板取地区に位置する「モネの池」は、その名の通り、フランスの画家クロード・モネの絵画を彷彿とさせる美しい景観で知られています。しかし、この池は、観光地として計画されたものではありません。1980年頃、高賀山の伏流水を利用した灌漑用のため池として整備されたものが、幾重にも重なる偶然によって、今のような姿になったのです。

1999年、地元のフラワーパーク板取の経営者である小林佐富朗氏が池の雑草を除去し、スイレンやコウホネを植栽しました。さらに、地元住民が飼育できなくなったコイが池に放たれ、現在の美しい生態系が形成されていきました。

池の大きさはテニスコート程度と小さく、常に湧き水が流れ込む湧水池です。そのため、年間を通して水温が約14℃に保たれ、冬に咲くコウホネは、黄色からオレンジ、そして赤へと鮮やかに色を変えていきます。また、太陽光の角度や水量によって、池の水の色も変化に富み、見る者を飽きさせません。

この高い透明度は、高賀山の地質が流紋岩であることに由来します。流紋岩からは養分を含まない湧き水が湧き出し、微生物の繁殖が抑制されるため、水質がきれいな状態が保たれているのです。

2015年頃、ブログやSNSでモネの池が話題になり始め、新聞やテレビで取り上げられると、観光客が急増しました。休日には3000人を超える観光客が訪れるようになり、国道256号線の大渋滞も発生するほどの人気スポットとなりました。

関市は公式ホームページで「モネの池（通称）」として紹介していますが、正式名称は「根道神社の池」もしくは単に「池」と呼ばれています。この通称は、2012年に写真雑誌のコンテストで最優秀作品賞を受賞した写真がきっかけとなり、インターネットを通じて広まりました。

しかし、観光客の増加は新たな課題をもたらしました。駐車場不足による満車状態、大型バスの受け入れ困難さ、交通渋滞などです。当初は地元警察の協力を得て交通整理が行われていましたが、持続可能な対策が求められています。

また、観光客の増加による環境問題も発生しています。池周辺の砂利道の固められたことにより、大雨で土砂が流れ込み、水質汚濁を引き起こしたこともありました。地元住民による迅速な対応で水質は回復しましたが、持続的な環境保全策が必要です。さらに、鯉への餌やりによる水質悪化も問題となっており、現在では餌やり禁止の看板が設置されています。

こうした問題への対応として、関市は「地域の宝磨き上げ事業」の一環として対策を進めています。

モネの池の人気は、2016年にはハート型の模様を持つコイの発見という新たな話題を生み出し、さらに観光客を呼び込みました。

モネの池には、コウホネ、スイレン、ヒルムシロなどの水生植物が生息し、コイが泳ぎます。これらの植物や生き物たちが織りなす調和のとれた景観が、モネの池の魅力となっています。

現在、モネの池は、楽曲の題材にもなっています。また、根道神社、フラワーパーク板取、板取川、板取街道など周辺の観光資源と連携した観光開発も進められています。公共交通機関としては、岐阜バスまたは関シティバスを利用し、さらに板取地域バスに乗り換える必要があります。

モネの池は、偶然から生まれた奇跡の景観であり、多くの観光客を魅了する一方で、環境保全と観光客の受け入れという課題を抱えています。この美しい池が、今後も多くの人々に感動を与え続け、持続可能な形で発展していくことを願っています。

もう一度検索