モブキャップ

モブキャップとは

モブキャップは、18世紀の西欧で流行した、モスリン製の頭をすっぽりと覆う縁に襞の付いた婦人帽の一種です。また、食品産業や精密機器の組み立てなどの作業着に用いられる、ナイロンやビニール、不織布などで出来た縁にゴムを入れ頭部全体を覆う帽子もモブキャップと呼ばれます。

起源と流行

18世紀末から19世紀初頭にかけて、モブキャップは女性の間で広く流行しました。主にモスリンなどの柔らかい布で作られ、頭部全体を覆うクラウンと、同一素材のフリルが付いたブリム（庇）で構成されています。装飾として、蝶結びや薔薇結びなどのリボンが飾られることもありました。

流行の衰退と変化

19世紀初頭には流行が去り、ヴィクトリア朝時代に入ると、モブキャップは主にメイドや年配の女性が着用するものとして認識されるようになりました。しかし、その名残は完全に消え去ったわけではありませんでした。

ケイト・グリーナウェイスタイルとモブキャップ

ヴィクトリア朝後期のイギリスでは、懐古趣味的な風潮が広がり、18世紀末から19世紀初頭の「オールドイングランド」を懐かしむ動きが起こりました。この時代に人気を博したのが、画家ケイト・グリーナウェイです。彼女は、古風な衣装を身に着けた子供たちの絵を多く手掛け、そのスタイルは「ケイト・グリーナウェイスタイル」と呼ばれました。

ケイト・グリーナウェイスタイルでは、少女服にモブキャップがよく用いられました。このスタイルは、仮装だけでなく、外出着や普段着としても人気を集め、19世紀末にはモブキャップは女児用の帽子として一定の地位を確立しました。

現代におけるモブキャップ

現代では、モブキャップはファッションアイテムとしての側面は薄れ、実用的な帽子として主に利用されています。食品産業や精密機器の組み立てなどの現場で、衛生管理のために作業者が着用する帽子として広く普及しています。素材もモスリンなどの布製のものだけでなく、ナイロンやビニール、不織布など、様々なものが使用されています。

まとめ

モブキャップは、18世紀の貴婦人から現代の作業者まで、様々な人々に愛用されてきた帽子です。その形や素材は時代とともに変化してきましたが、頭部を覆うという基本的な機能は変わっていません。ファッション史や文化史を語る上で、モブキャップは興味深いアイテムの一つと言えるでしょう。

参考文献

坂井妙子『アリスの服が着たい―ヴィクトリア朝児童文学と子供服の誕生』勁草出版、2007年　ISBN 9784326653270

関連項目

ナイトキャップ：モブキャップが使われることも多い。

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