モルキンスキンナ

モルキンスキンナ (Morkinskinna) について

『モルキンスキンナ』（古ノルド語: Morkinskinna）は、11世紀中頃から12世紀中頃（およそ1025年から1157年）までのノルウェー王たちの歴史を古ノルド語で綴った重要な王のサガです。1220年頃にアイスランドで書かれたと考えられており、1275年頃に作成された写本が現存しています。

書名の由来と写本

「モルキンスキンナ」という書名は「腐った羊皮紙」を意味し、この名前は元々、現存する写本自体を指していました。この写本は、一般に GKS 1009 fol という写本記号で表され、現在はコペンハーゲンのデンマーク王立図書館に所蔵されています。この写本は1662年に Þormóður Torfason (Tormod Torfæus) によってアイスランドからデンマークに持ち込まれました。

内容の特徴

サガは1025-1026年から始まり、シグル2世の死（1155年）に関する記述の後、1157年の段階で唐突に終わっています。元々はもっと長く、1177年まで記述されていたと考えられています。これは、『モルキンスキンナ』を出典とした『ファグルスキンナ』および『ヘイムスクリングラ』における記述がその年で終わっていることからも推測できます。

サガとしての内容に加え、本文中にはスカルド詩からの引用が豊富に組み込まれている点も特徴です（約270スタンザ）。また、サットルと呼ばれるアイスランドの小話も多数含まれており、歴史書としての側面と文学的な側面を併せ持っています。

章構成の概観

『モルキンスキンナ』は全100章で構成されており、各章はノルウェー王の在位期間ごとに年代順に区分されています。以下に、各王の統治期間における章のタイトルを概観します。

マグヌス1世 (r. 1035-1047)

1. マグヌスとハーラル（彼の叔父）のサガが始まる
2. スヴェインについて
3. マグヌス王の宴について
4. マグヌス王について
5. マグヌスに対する宣戦布告と公爵について
6. ユトランドのマグヌス王
7. ユトランド滞在中のマグヌス王
8. ハーラルがスコーネーに来た時の出航について
9. ハーラルの旅について
10. ノールズブリクト（＝ハーラル）の旅について
11. 宣戦布告について
12. ノールズブリクトとヤール・ギルギルの襲撃について
13. ハーラルのエルサレムへの旅
14. マグヌス王とハーラルの出会いについて
15. ソルケルの誹謗中傷
16. マグヌス王について
17. マグヌス王がオルムにヤール位を授けた方法
18. 王たちの間の紛争について
19. 王たちについて
20. ソルステイン・ハルソンのこと
21. 王たちについて
22. ハーラル王の良い助言
23. マグヌス王とマルグレーについて
24. Hreiðars þáttr (「Hreiðarrの物語」)
25. 王たちがどのように苦しめたか、そして王の母がどのように捕虜に彼の命を与えたか
26. マグヌス王が死ぬ [1047]
27. ハーラルの集会
28. マグヌス王の葬送の旅

ハーラル3世 (r. 1047-1066)

29. ハーラルの集会
30. Halldórs þáttr Snorrasonar
31. [デンマークでのハーラル王の戦いについて]
32. ハーラル王について
33. 王とエイナール・サムバルスケルフィルの間の意見の相違について
34. アイスランド人について
35. ハーラル王の賢明な助言について
36. 西フィヨルドのオドゥンがどのようにスヴェイン王にクマをもたらしたか [Auðunar þáttr vestfirzka]
37. ハーラル王とウップランド人について
38. ハーラル王とブランド・オルヴィ（寛大な）について
39. ハーラル王について
40. アイスランド人の物語について [Íslendings þáttr sögufróða]
41. ソルヴァルズル・クラークネルがハーラル王に帆を贈ったことについて
42. ハーラル王とホーコンについて
43. Sneglu-Halla þáttr.
44. [王はボートで男に出会う]
45. [トリグヴィ・オラフソンの親愛なる友人とハーラル王について]
46. [ギズール・イスレイフソンについて]
47. ストゥフル・エン・ブリندیについて
48. オッドル・オフェイグソンについて
49. ハーラル王がどのようにして西へ旅をしたか
50. ハーラル王に対する裏切り
51. オラフ・ハーラルソンのノルウェーへの帰還
52. ハロルド・ゴドウィンソンの死 [1066]

オーラヴ3世 (r. 1067-1093)

53. オーラフ・キルリ「静かな」王のサガ
54. オーラフ王とクラーク・カール（カラス男）について

マグヌス3世 (r. 1093-1103)

55. マグヌス・ベルフェトル王のサガ
56. マグヌス王とスヴェインキ・ステイナルソンについて
57. マグヌス王の苦しみについて
58. マグヌス王について
59. マグヌス王の死について

シグル1世、オーラヴ、エイステイン1世 (r. 1103-1130)

60. マグヌス王の息子たちの統治の始まり
61. シグル王の冒険の物語
62. キリヤラクス皇帝（アレクシウス1世コンネノス）の贈り物について
63. シグル王の宴について
64. エイステイン王について
65. エイステイン王とイヴァルについて
66. 王の系図について
67. シグル王の夢について
68. エイステイン王とインギマルがアス＝ソルズルと行った取引
69. オーラフ・マグヌソン王の死 [1115]
70. シグル王とエイステイン王の間の法的取引の説明 (Þinga saga)
71. 王たちの競争
72. ソーラリン・ストゥットフェルドルのこと
73. エイステイン王の死について [1123]
74. シグル王とオッタルについて
75. シグル王とエーレンルについて
76. ハーラル・ギッリについて
77. シグル王とアスラーク・ハニ（雄鶏）について
78. シグル王について
79. マグヌスとハーラルの間の賭けについて
80. シグル王とマグニ司教について
81. シグル王の死 [1130]

ハーラル4世 (r. 1130-6)、マグヌス4世 (r. 1130-5, 1137-9)

82. ハーラルとマグヌスについて
83. ハーラル王からマグヌス司教への贈り物
84. シグルズル・スレンビジャークンの物語
85. シグルズル・スレンビルについて
86. ハーラル王の殺害 [1136年にシグルズル・スレンビジャークンによって]
87. シグルズル・スレンビル王について

シグル2世 (1136-1155)

88. ハーラル王の息子たちについて
89. シグルズルについて
90. シグルズル・スレンビル王について
91. インギ王の手紙
92. シグルズル・スレンビルについて
93. シグルズル・スレンビル王について
94. オッタル・ビルティングルの殺害
95. [無題]
96. シグルズル王について
97. エイステイン王について
98. ガイルステインの殺害
99. [無題]
100. シグルズル王の死について [1155]


『モルキンスキンナ』は、ノルウェー王の歴史を知る上で欠かせない資料であると同時に、古ノルド文学の魅力を伝える作品としても高く評価されています。

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