モンテネグロ社会主義者民主党

モンテネグロ社会主義者民主党（DPS）

モンテネグロ社会主義者民主党（Demokratska partija socijalista Crne Gore/DPS）は、モンテネグロにおける主要な政党の一つです。その歴史は、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国の政治的混乱から始まり、モンテネグロの独立、そして現代の政治へと深く関わっています。

党の歴史

DPSの起源は、1980年代後半のユーゴスラビア社会主義連邦共和国の政治的混乱に遡ります。当時、セルビア共和国共産主義者同盟で権力を掌握したスロボダン・ミロシェヴィッチは、反官僚革命を通じてヴォイヴォディナ、コソボ、モンテネグロの共産主義者同盟も掌握し、各党の指導部を自身の支持者に刷新しました。この過程で、モミル・ブラトヴィチ、スヴェトザル・マロヴィッチ、ミロ・ジュカノヴィチといった若手政治家が台頭し、後のDPS創設メンバーとなりました。

1990年、ユーゴスラビア初の複数政党制による普通選挙で、モンテネグロ共産主義者同盟はブラトヴィチを党首に擁立し、125議席中83議席を獲得する圧勝を収めました。同時に行われた大統領選挙でもブラトヴィチが勝利し、ジュカノヴィチが首相に選出され、モンテネグロ共和国内の政治を掌握しました。1991年には共産主義を放棄し、党名をモンテネグロ社会主義者民主党に改称しましたが、党幹部の人事に大きな変更はありませんでした。

当初、DPSはミロシェヴィッチの大セルビア主義的な政策を支持し、クロアチア紛争やボスニア・ヘルツェゴビナ紛争にも兵を派遣しました。しかし、ミロシェヴィッチが大セルビア主義を実現できず、デイトン合意を結んだ後、ミロシェヴィッチ支持を続けるブラトヴィチと、距離を置こうとするジュカノヴィチらの間で対立が深まりました。

1997年、大統領再選を目指すブラトヴィチに対し、ジュカノヴィチが対立候補として出馬を表明。激戦の末、ジュカノヴィッチが勝利し、党の主導権を握りました。ジュカノヴィッチは、コソボ紛争でミロシェヴィッチの主張を支持しないことを表明し、反ミロシェヴィッチへと大きく舵を切りました。一方、敗れたブラトヴィチ派は、新党モンテネグロ社会主義者人民党（SNP）を設立し、ジュカノヴィッチと完全に決裂しました。

ジュカノヴィッチは、首相にフィリップ・ヴヤノヴィッチを任命し、親欧米的な外交を展開。NATOによる大規模空爆がモンテネグロに及ぶのを回避し、流通通貨をユーゴスラビア・ディナールからドイツ・マルクに切り替えるなど、セルビアとの経済的な連携を弱めました。また、民族政策においては、強硬な大セルビア路線を撤回し、アルバニア語教育を容認するなど、多様性を認める政策に転換しました。

ミロシェヴィッチ失脚後も、DPSはモンテネグロの将来的な独立を主張し、選挙で第一党を維持し続けました。2003年にユーゴスラビアがセルビア・モンテネグロに改組・改称された際、DPSは同国憲法に「3年後に連邦離脱を可能とする」条項を盛り込むことに成功しました。そして2006年5月21日、モンテネグロ独立の是非を問う国民投票が実施され、DPSは投票への参加と賛成を呼びかけるキャンペーンを展開し、EUが提示した条件をクリアして、モンテネグロ独立に大きく貢献しました。

その後も長らく政権与党の座を守っていましたが、2020年の総選挙で第一党を維持したものの、「モンテネグロの未来のために」などが率いる野党連合が過半数を獲得し、政権交代を許しました。2023年の大統領選挙では、ジュカノヴィッチが新興政党「ヨーロッパ・ナウ！」（PES!）のヤコフ・ミラトヴィッチに敗北し、党首を辞任。さらに2023年の総選挙では、PES!が第一党に躍進し、DPSは議会第一党の座も失いました。

歴代代表

モミル・ブラトヴィッチ
ミロ・ジュカノヴィッチ

党勢の推移

（国民議会議員選挙における結果は省略）

関連項目

ユーゴスラビア社会主義連邦共和国
ユーゴスラビア共産主義者同盟
モンテネグロ社会主義共和国
ユーゴスラビア紛争
ユーゴスラビア連邦共和国
セルビア・モンテネグロ
モンテネグロ

外部リンク

党公式ページ（モンテネグロ語）

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