モントルー条約
モントルー条約
1936年にスイスのモントルーで締結された海峡制度に関する条約、通称モントルー条約（Convention Regarding the Regime of the Straits）は、ボスポラス海峡、マルマラ海、ダーダネルス海峡の航行規制を定めた重要な国際法です。本条約は、商船の自由な航行を基本原則としており、さらには黒海と地中海をつなぐ交通路としての役割を強化しています。
概要
モントルー条約は、以下の主要なポイントで構成されています:
- - 商船の自由航行: 項目第2条により、商船に対しては自由に航行する権利が与えられています。
- - 航空路の設定: 第23条は黒海と地中海の間に航空路を設けることを規定しています。
- - 軍艦の制限: 海峡を航行する軍艦については、条約の第2部および付属文書により、数多くの制限が設けられています。
経緯
おおよそ18世紀から国際的な課題として取り上げられた海峡地帯の通航問題は、1868年に締結されたキュチュク・カイナルジ条約以降も複雑な経緯をたどります。オスマン帝国は、第一次世界大戦後のセーヴル条約により海峡地帯の主権を失いました。しかし、1923年のローザンヌ条約により新たに成立したトルコ共和国が海峡の主権を取り戻すことが確認されます。1930年代にはイタリアの軍備増強に伴ってトルコが海峡地帯の再武装を要求するようになり、その結果としてモントルー条約が締結されました。
トルコの態度
特に冷戦時において、トルコはボスポラス海峡の重要性を認識し、他国に干渉されることを警戒しています。そのため、モントルー条約の運用に対して堅固な姿勢で臨んでおり、特に軍艦の通過に関しては慎重です。2022年2月、トルコ政府はロシア-ウクライナ戦争を背景に、軍艦の海峡通過を認めない通告を行いました。
船舶の通航制限
商船
商船に関しては原則として自由航行が認められていますが、戦時中やトルコの安全が脅かされる場合には制限がかかることがあります（条約第5条・第6条）。
軍艦
軍艦については、詳細な規定が設けられています。平時と戦時での区別があり、平時においても大型軍艦に対する制限が存在します。特にトルコ自身が危機に直面した場合には、航行に関して政府の裁量が発生します。条約の付録IIでは、排水量や艦種に基づく様々な分類がなされています。
条約締結国
モントルー条約は、当初トルコ、ソ連、ルーマニア、ブルガリアのほか、イギリス、フランス、ギリシャ、ユーゴスラビア、日本を含む9カ国によって締結されました。その後、イタリアも1938年に参加しています。キプロスやウクライナも後に承継国として加わっています。
日本の立場
日本は海峡地帯への直接的利益が少ないと考えられるものの、モントルー条約の締結国に名を連ねています。これは、国際連盟が主導した海峡委員会での活動に起因しており、日本は条約に関する特定の付帯条項を留保しました。サンフランシスコ平和条約の発効により、日本は本条約上の権利を放棄しています。
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