モン・ペルデュ

モン・ペルデュ：ピレネー山脈の雄大な峰と豊かな自然遺産

モン・ペルデュ（[フランス]]語: Mont Perdu、スペイン語: Monte Perdido）は、スペインとフランスにまたがるピレネー山脈中央部に位置する、雄大な山です。その標高は3,352メートル（ユネスコ発表）。ピレネー山脈ではアネト山]、ポセッツ峰(3,369m)に次ぐ[[高さで、石灰岩の山としてはヨーロッパ最高峰を誇ります。

山の名の由来と多様な呼称

フランス語のMont Perdu、スペイン語のMonte Perdidoをはじめ、アラゴン語、カタルーニャ語など、様々な言語で「失われた山」や「迷子の山」を意味する名前で呼ばれています。これは、ガヴァバルニー圏谷とダスタウベー圏谷のピークが視界を遮るため、フランス側からは山頂が見えにくいことに由来します。日本語ではペルデュ山やペルディド山などとも表記されます。

モン・ペルデュという名称は、山頂だけでなく、ガヴァバルニー圏谷を含む広大な石灰岩の山塊、その周辺のピークや稜線などを含む、より広い範囲を指す「モン・ペルデュ山塊 (Massif du Mont Perdu)」として使われることもあります。ガヴァバルニー圏谷には、欧州一の落差422メートルを誇る壮大な滝が流れ落ちています。

異なる気候と景観

モン・ペルデュの南北斜面は、全く異なる気候と景観を見せています。北斜面は湿度の高い海洋性気候で、3つのカール（圏谷）が形成されています。一方、南斜面は乾燥した地中海性気候で、深い峡谷が刻まれています。この多様な地形が、豊かな生態系を育んでいるのです。

登山とアクセス

モン・ペルデュへの登山は、スペイン側からの方がフランス側からよりも容易です。オルデサ渓谷にあるトルラの村から登山道が始まり、ゴリス避難小屋を目指してソアソ圏谷を越え、頂上を目指します。しかし、雪山登山となるため、危険性を伴うことを忘れてはいけません。

オルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園

1918年に設立されたオルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園は、モン・ペルデュを中心とした、面積156平方キロメートルに及ぶ広大な自然保護区です。当初は21平方キロメートルでしたが、その後アニスクロ峡谷などを含め拡大されました。スペインで最初に制定された国立公園のひとつであり、1500種以上の植物、171種の鳥類、32種の哺乳類、8種類の爬虫類など、多様な生物が生息しています。特に翼幅300cmを超えるヒゲワシは、この地域の象徴的な野生生物です。また、珍しいカラフトアツモリソウも生育しています。

世界遺産「ピレネー山脈のモン・ペルデュ」

モン・ペルデュを中心とした、スペインとフランスの国境付近一帯は、「トレス・セロルス＝モン＝ペルデュ」(Tres Serols-Mont-Perdu)または「ピレネー山脈のモン・ペルデュ」(Pyrénées-Mont Perdu) の名称で、世界遺産に登録されています（ID773）。

世界遺産登録範囲

スペイン側: オルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園とその周辺地域（オルデサ渓谷、アニスクロ渓谷、ピネタ渓谷など）が含まれます。この地域には、何世紀にも渡る段々畑や牧畜の伝統が刻まれた景観と、それに適応した農牧民の生活文化が残されています。ヨーロッパでは珍しい家畜の移牧も行われています。

フランス側: ピレネー国立公園の一部（ガヴァバルニー圏谷、エスタルベ圏谷、トルムーズ圏谷、バルード岩壁など）と周辺のコミューンが含まれます。氷河によって形成された圏谷や岩壁、そして中腹の牧場や納屋は、ピレネー山脈の農牧畜文化を今に伝えています。スペインとフランスの農民の間には、家畜の放牧に関する先祖代々の合意が存在するなど、両国にまたがる文化交流の証も見られます。また、ガヴァルニー村は「フランスのサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の一部にも登録されています。

世界遺産登録基準

この世界遺産は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例
(5) ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例。もしくは特に不可逆的な変化の中で存続が危ぶまれている人と環境の関わりあいの際立った例
(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの

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