圏谷

圏谷とカールの形成

圏谷（けんこく）、またはカール（英語: Cirque）は、山の高地において氷河によって削られた独特の谷です。この地形は、氷河が山肌を侵食し、源流部で形作られました。圏谷は一般的に、山の斜面をスプーンでえぐったような形をしており、氷河が成長するにつれ、静かにその姿を変えていきます。特に、山稜の直下で見られることが多いです。

成長している氷河の影響で谷は自らの形を変えるため、成長期の氷河による具体的な形状を正確に推し量るのは難しいかもしれません。しかし、氷河が後退する際、明瞭な谷の姿が現れてきます。圏谷は通常、急なカール壁に囲まれ、その底にはしばしば平坦あるいは逆傾斜した地形が広がります。このカール底には、氷河によって運ばれた土砂が堆積したモレーンが見られることが一般的であり、加えて湖が形成されることもあります。

日本における圏谷の歴史

日本で最初に学術的に記述された圏谷は、帝国大学の教授である山崎直方によって発見された立山連峰の山崎カールです。この発見は、日本の氷河地形の研究に多大な影響を与え、のちに多くの圏谷が確認されました。これらの研究成果は日本の後期更新世から完新世にかけての古環境の理解に貢献しています。

日本の圏谷の分布

日本国内では、特に日本アルプスや日高山脈で多くの圏谷が見られます。これらの圏谷では、カール底のモレーンや堆積物に着目して、氷河の発展や衰退の時代を推定する研究が進められています。たとえば、立山連峰の氷河はおおよそ1キロメートル程度の規模であり、最終氷期の頃でも最大で10キロメートル程度に限られることが報告されています。

日高山脈の圏谷

日高山脈には、多くの圏谷が存在しています。幌尻岳の七ッ沼カールやカムイエクウチカウシ山の様々なカール（八ノ沢カールや九ノ沢カールなど）、北戸蔦別岳の戸蔦別カール、エサオマントッタベツ岳の北カール、春別岳の十ノ沢カールといった具体例があります。

飛騨山脈の圏谷群

飛騨山脈でも圏谷が見られ、薬師岳の圏谷群は国の特別天然記念物に指定されています。他には、穂高岳の涸沢カールや槍ヶ岳の槍沢カールや天狗原カールなどがあり、立山の山崎カールは国の天然記念物としても知られています。また、白馬岳や黒部五郎岳にも独自のカールがあります。

木曽山脈と赤石山脈の圏谷

木曽山脈では、宝剣岳の千畳敷カール、木曽駒ヶ岳の濃ヶ池カール、空木岳の空木平カール、南駒ヶ岳の摺鉢窪カールなどが存在します。赤石山脈でも圏谷が確認されており、特に仙丈ヶ岳の薮沢カールや小仙丈カール、大仙丈カール、間ノ岳の細沢カールなどがその一部を形成しています。

まとめ

圏谷は、氷河の侵食作用により形成される特異な地形で、日本の山々にその痕跡を見ることができます。日本の各地方には多様な圏谷が存在し、その研究は氷河活動に関する知見を深める重要な役割を果たしています。

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