モーター (競艇)

競艇におけるモーターの概要

競艇で使用される「モーター」は、実際には直列2気筒の2サイクルレシプロエンジンを基にした船外機です。このエンジンはプロペラシャフトに連結されたプロペラによって船を推進します。冷却水はウォーターインテークから取り入れられ、エンジン内を循環して冷却され、最終的にはウォーターニップルから排出されます。

毎年冬になると、キャブレターの凍結を防ぐために温水パイプが設置され、エンジンの熱を利用した冷却水がキャブレターに流れ込みます。燃料タンクは約2.3リットルの容量を持ち、2サイクルエンジン用の混合燃料（ガソリンとエンジンオイル）を使用する必要があります。排気は水中に放出されますが、環境への配慮から生分解性のオイルが使われています。

環境への取り組み

2025年5月からは、びわこ競艇場と大村競艇場において、二酸化炭素排出量削減のためにエタノールを30%混合した「E30」燃料の導入が試験的に行われる予定です。この新燃料が導入されることで、約12%から15%のCO2削減が見込まれています。試験的導入は7月までの予定ですが、問題がなければ引き続き使用され、他の競艇場にも順次拡大される方針です。

日本のモーターの現状

2020年には、すべての日本の競艇場でヤマト発動機製の水冷ガソリンエンジンが採用され、ワンメイク化が進められました。2015年からは排気量396.9cc、出力約23.5kW（31PS）の「331型」が統一され、競技用エンジンの特性上バックギアなどの機能は省かれています。モーターの価格は約60万円ですが、一般向けには販売されていません。使用期限は1年間で、年に一度の交換が義務付けられ、適切に性能が保たれていることが確認されます。競走成績によって各モーターの評価が変わり、成績が良いモーターは選手による整備や試運転を行います。

整備と成績

成績上位のモーターは翌年の整備用部品として再利用され、一般的には成績下位の機体が練習用として使われることが多いです。また、特に優れた成績を収めたモーターは、展示保存されることもあります。競走成績を平準化するために、成績の良いモーターをわざと使用せず、成績が良くない機体を中心に抽選を行う「低調機シリーズ」もあります。これにより全体の競争が激化し、公平なレース環境が維持されることを目指しています。

海外のモーター事情

韓国では、渼沙里漕艇競技場で自国で開発された独自のエンジン（排気量429cc、出力約32PS）が使用されています。このように、競艇というスポーツは国による技術開発や環境への取り組みが見られる複雑な側面を持っています。

歴史的背景

競艇の初期には、異なるメーカーのモーターが使われており、複数の種類を使い分けるケースもありました。大村競艇場ではキヌタモーターなどが使用されていました。選手がボートやモーターを所有する形態も検討されましたが、選手が手を挙げなかったため、施行者がボートを準備し、選手に貸し出す形式が定着しました。このような経緯もあり、現在の競艇のシステムが形成されました。

1960年代にはレースのスピードを求める声が強くなり、国際的なメーカーからエンジンを導入する検討が行われました。その結果、ケーニッヒ製エンジンが選ばれ、劇的なスピードアップがはかられました。1980年代には選手が自身でモーターを整備する新しい方式が導入され、モーターの統一が進むこととなりました。

未来への挑戦

今後も競艇はさらなる技術革新と環境への取り組みを続けていく必要があります。競艇におけるモーター開発は非常に歴史が深く、未来においてもその進化が期待されます。特に環境保護が重要視される今、エコフレンドリーな競技運営が求められる中で、持続可能なエンジン技術はさらに発展していくことでしょう。

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