モーリス・イースト

モーリス・イースト（Morris East）は、1973年8月8日にフィリピンのサンバレス州オロンガポに生を受けた元プロボクサーです。若くしてプロの世界に飛び込み、WBA世界ジュニアウェルター級チャンピオンとして、特に日本人ボクサーとの対戦でその名を知られました。

彼のプロキャリアは非常に早く始まりました。わずか15歳であった1989年5月3日にリングに上がり、6回TKO勝利を収め、鮮烈なデビューを飾ります。順調にキャリアを積み重ね、プロ17戦目となる1992年2月29日には、OPBF東洋太平洋ジュニアウェルター級（現スーパーライト級）王座決定戦に出場。見事に勝利を収め、このタイトルを獲得しました。同年7月には初防衛に成功しましたが、その後、世界挑戦を見据え、OPBF王座を返上しました。

そして、プロ19戦目、1992年9月9日、モーリス・イーストにとって運命の日が訪れます。日本の東京、日本武道館で行われたWBA世界ジュニアウェルター級タイトルマッチで、当時の王者であった平仲明信に挑戦しました。平仲は経験豊富なベテラン王者であり、試合序盤はイーストにとって厳しい展開が続きました。しかし、若い挑戦者は諦めませんでした。迎えた11回、イーストの放った鋭いカウンターの左ストレートが平仲にクリーンヒット。王者から痛烈なダウンを奪います。立ち上がることができない平仲を見て、レフェリーは即座に試合をストップ。モーリス・イーストは劇的な逆転TKO勝利で、弱冠19歳にしてWBA世界ジュニアウェルター級王座を獲得するという快挙を成し遂げました。この一戦におけるイーストのKO勝利は、その年のボクシング界で最も衝撃的なノックアウトの一つとして高く評価され、権威あるリングマガジンによって「ノックアウト・オブ・ザ・イヤー」に選出されました。

世界王者となったイーストは、迎えた初防衛戦で試練に直面します。1993年1月12日、敵地アルゼンチンで元世界王者ファン・マルチン・コッジと対戦。しかし、この試合はコッジの前に苦戦を強いられ、8回TKO負けを喫し、手にしたばかりの世界王座から陥落することとなりました。

世界王座を失った後も、イーストはキャリアを継続します。1995年2月13日には、平仲戦以来となる約2年半ぶりに日本のリングに上がります。後楽園ホールで行われたこの試合では、日本ウェルター級王者であった佐藤仁徳とノンタイトル戦で対戦。試合中にダウンを奪う場面もありましたが、10回判定で敗れました。しかし、故郷フィリピンに戻った後、1995年3月25日に行われたフィリピンウェルター級王座決定戦に勝利し、国内タイトルを獲得しました。このタイトルも同年5月27日の初防衛戦に勝利した後、キャリアの幕を閉じ、引退しました。

モーリス・イーストは、若くして世界王者に駆け上がり、そのキャリアは短くも強烈なインパクトを残しました。特に平仲明信から奪った世界王座獲得のKO劇は、今なお多くのファンの記憶に残る一戦として語り継がれています。

獲得タイトル

第25代OPBF東洋太平洋ジュニアウェルター級王座（防衛0度）
WBA世界ジュニアウェルター級王座（防衛0度）
* フィリピンウェルター級王座（防衛1度）

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