ヨハンネス・ベッサリオン

ヨハンネス・ベッサリオン（Johannes Bessarion, 1403年 - 1472年）は、東ローマ帝国出身の著名な人文主義者であり、その生涯は学術と宗教の交差点に位置づけられます。彼は正教会の聖職者でありながら、後にカトリック教会に改宗し、その両方の世界で重要な役割を果たしました。本来の名前はバシレイオス・ベッサリオン（Basilius Bessarion, ギリシア語：Βασίλειος Βησσαρίων）であり、中世ギリシア語では「ヨアニス・ヴィサリオン」と呼ばれていました。

東ローマ帝国からイタリアへ

ベッサリオンは、東ローマ帝国が文化的な影響力を保持していた時代に生まれ、その遺産をヨーロッパに伝える重要な役割を担いました。彼は特に、プラトン哲学をイタリアに導入したことで知られ、それがネオプラトニズムの隆盛を促す一因となりました。また、数多くのギリシア語文献をイタリアにもたらし、その保存と研究に貢献しました。

生涯と業績

1403年、ベッサリオンは黒海沿岸の都市トレビゾンドで誕生しました。彼は修道士としての道を選び、コンスタンティノポリスで新プラトン主義哲学者のゲオルギオス・ゲミストス・プレトンに師事しました。プレトンの影響は、ベッサリオンの思想形成に大きな影響を与えました。

1437年、ベッサリオンはニカイアの府主教に任命され、翌年の1438年にはフェラーラ・フィレンツェ公会議に正教会とカトリック教会の合同賛成派のリーダーとして参加しました。この公会議は東西教会の再統合を目指すものでしたが、帰国後に反対意見が噴出し、教会合同は実現しませんでした。しかし、この公会議での東西宥和への努力と彼の深い学識は、多くの人々に認められることになりました。

1439年、その功績が認められ、ベッサリオンは教皇庁の枢機卿およびカトリック教会のコンスタンティノポリス総大司教（名義のみで実際にはコンスタンティノープルには住んでいませんでした）に任命され、これにより1440年にイタリアに移住し、カトリックに改宗しました。イタリアでのベッサリオンは、枢機卿としての職務を遂行する傍ら、対トルコ十字軍の提議や、亡命してきたギリシャ人の支援に尽力しました。

ベッサリオンは自宅を拠点に、イタリア人や亡命ギリシャ人の知識人たちとの間でアカデミーを形成しました。1453年のコンスタンティノープルの陥落以降は、散逸しつつあった各地のギリシア語写本を組織的に収集しました。この活動は、ギリシア文化の保存に大きく貢献しました。枢機卿大学の学部長という役職はまだ設けられていませんでしたが、ベッサリオンは1464年と1471年の枢機卿会議を主宰し、その影響力を行使しました。

1468年、ベッサリオンは自身が収集したすべての蔵書をヴェネツィア共和国のサン・マルコ寺院に寄贈し、その管理を委ねる契約を交わしました。この寄贈によって設立されたサン・マルコ文庫は、今日でもギリシア語写本の世界最大のコレクションとして知られています。

死と遺産

ベッサリオンは1472年、ラヴェンナで生涯を閉じました。彼の業績は、人文主義の発展、東西教会の対話、ギリシア文化の保存に貢献し、彼の生涯は学問と宗教の融合の模範として今も語り継がれています。

ベッサリオンは、ルネサンス期における学問と文化の発展に大きな影響を与えた人物であり、彼の活動は後世の人々にとって重要な遺産となっています。

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