ヤクサルテス川の戦い

ヤクサルテス川の戦いの概要

ヤクサルテス川の戦いは、紀元前329年にマケドニア軍のアレクサンドロス大王と、ヤクサルテス川の流域に住むスキタイ族との間で発生した重要な戦闘です。この戦いは、現在のウズベキスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタンにまたがる地域で行われ、古代タシュケントの南西からホジェンドの北東に至るまでの広範囲な戦場を形成しました。

背景

アレクサンドロス大王は、東方遠征中にヤクサルテス川を自身の帝国の北東の境界にすることを計画していました。この動きに対し、地域住民のソグディアナ人が抵抗を示し、反乱が勃発しました。その間に、遊牧民の騎馬隊がヤクサルテス川の北部に集まり、戦闘に参加。この戦いの背景には、ピリッポス2世との戦闘で敗北を喫したスキタイ族の復讐心が潜んでいました。スキタイの戦士たちは罵詈雑言でマケドニア軍を挑発し、アレクサンドロス大王は激怒し、攻撃を決断しました。

渡河の戦術

スキタイ軍は川の北岸に陣取っていましたが、アレクサンドロス大王は渡河する際に敵軍を過小評価し、彼らの騎馬弓兵の優位性を打破しようとしました。王は大規模に渡河するよう命じ、自軍の弓兵や投射兵器で援護しました。スキタイ軍はこの攻撃にさらされ、その混乱に乗じて、マケドニア軍はスムーズに川を渡ることに成功しました。この戦術は、記録上初めての上陸支援攻撃として評価されています。

戦闘の展開

戦闘が始まると、スキタイの騎兵は弧を描くように弦を引き、マケドニア軍に矢を放ちました。マケドニア軍はこの戦術を打破するために、弓兵と軽装部隊を組み合わせた混成部隊をスキタイの陣に密かに近づけました。アレクサンドロス大王もヘタイロイや騎馬投槍兵と共に突撃し、戦闘の流れを変えました。スキタイ軍は包囲され、アレクサンドロス大王の巧妙な戦術に捕らえられ、壊滅的な損失を被ることになりました。

結果とその後

約1,200人のスキタイ兵が捕らえられ、司令官のサトラケスも討たれました。スキタイ族は大きな損害を受け、その後の追撃で全滅の憂き目を逃れたのは、アレクサンドロス大王が体調不良で追撃を中止したからです。この戦いは、マケドニア軍の士気を著しく高め、周辺の遊牧民族に対しても深刻な心理的影響を与えました。

スキタイ王はこの危機を受けてアレクサンドロス大王に使者を送り、彼の命令に従う旨を約束しました。アレクサンドロス大王は、遊牧民を征服することを主目的としていなかったため、彼らとの友好的な関係を希望し、捕虜を無償で解放しました。この出来事以降、スキタイ族はアレクサンドロス大王に逆らうことなく、むしろ彼の東方遠征を支援するようになりました。

参考文献・外部リンク

• - James R. Ashley. _The Macedonian Empire: the era of warfare under Philip II and Alexander the Great_. McFarland & Company, 2004.
• - Arrian. _Anabasis Alexandri Book 4_.
• - Ancient Warfare

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