ヘタイロイ

ヘタイロイ：古代マケドニアの重装騎兵

ヘタイロイ（Εταίροι）は、古代ギリシャ時代におけるマケドニアの重装騎兵部隊を指します。この部隊は封建的な貴族たちから構成され、特にアレクサンドロス大王の軍事遠征において重要な役割を果たしました。ヘタイロイを意味する語は元々「王の友」を示し、王に仕える側近や仲間を指すこともありましたが、軍事的な文脈では主に騎兵部隊を指す言葉として使われました。

ヘタイロイの装備と戦術

マケドニアの騎兵は、当時のギリシャの騎兵に比べ、質・量の両面で優れた戦闘能力を有していました。その装備には、皮革製の胸当て、籠手、脛当て、及び青銅製の兜が含まれており、敵との遭遇戦では長大なサリッサ（槍）を用いて突撃し、近接戦闘では剣を使用しました。彼らは盾を持たず、代わりにサリッサを携えて戦い、アレクサンドロスの遠征中にはホプリタイ（重装歩兵）と共に展開された鉄床戦術において中核的な役割を果たしました。

兜については、視野を広く確保する設計がされており、当時のギリシャの装備よりも簡略化されていました。このため、防御力にはやや不足がありましたが、ヘタイロイはその機動性を活かした戦術で、騎兵としての本来の強みを発揮しました。

当時の馬の鞍は布や毛皮で作られ、鐙が装備されていなかったため、騎乗には高い技術と訓練が求められました。これにより、彼らは特に騎馬において大きな一体感を持つことは困難でしたが、それでも突撃能力を十分に生かした部隊であったと言えます。

その他の騎兵部隊

マケドニア軍にはヘタイロイの他にも「プロドロモス」と呼ばれる部隊が存在しました。プロドロモスは軽装の騎兵で、主に偵察や哨戒に従事していましたが、必要に応じて戦闘にも参加しました。この部隊もまた、サリッサを用いて突撃することがあり、時には「サリッソポロイ」とも称されました。

さらに、「ペゼタイロイ」という名称の歩兵部隊もあり、これは「歩兵のヘタイロイ」を意味します。この部隊はフィリッポス2世によって設立され、実際には非常時に召集される普通のホプリタイでした。彼らの中にはヒュパスピスタイと呼ばれる選抜部隊があり、この部隊は常備軍としての地位を持ち、高度な訓練を受けることでより強力な歩兵部隊を形成しました。

ヘタイロイの影響

ヘタイロイは単なる騎兵部隊にとどまらず、マケドニアの軍事戦略において不可欠な存在でした。彼らはファランクスを構成し、ヘタイロイと歩兵部隊が協力することで、マケドニア軍は戦場において圧倒的な存在感を示しました。アレクサンドロス大王の死後、ヘタイロイは分裂したヘレニズム諸国でもその技術を継承し、優れた重装歩兵部隊が形成される基盤となりました。

このように、ヘタイロイは古代マケドニアの軍事史において重要な役割を果たし、後世の騎兵や歩兵の戦術に大きな影響を与えました。

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