ホジェンド

ホジェンド（Khujand）は、タジキスタン共和国北部に位置するソグド州の州都です。ペルシア語ではخجند、タジク語ではХуҷандと表記されます。中央アジアにおいては特に古い歴史を持つ都市の一つとして知られており、現在のタジキスタンでは首都ドゥシャンベに次いで人口規模の大きな第二の都市となっています。市域の人口は約18万2千人（2019年時点）ですが、都市圏全体では93万人を超える人々が暮らしています。かつてソビエト連邦時代には、革命指導者レーニンにちなんでレニナバード（Ленинабад）と呼ばれていた時期もありましたが、タジキスタンの独立に伴い元の名称であるホジェンドに戻されました。

この都市は、古くからイスラム神学のエリート層であるホージャ家の影響力が強い地域でした。彼らの持つ規律や相互扶助の精神は、1980年代までホジェンド出身者がタジキスタンの政治や社会において一定の権力を維持する上で重要な役割を果たしたとされています。

ホジェンドの歴史は紀元前6世紀にまで遡ります。この地に古代ペルシア人が築いた城砦が、古代ギリシア人からはキロポリあるいはキレスハタ（「果て」「最後の」を意味する名称）と呼ばれていました。紀元前329年には、マケドニアのアレクサンドロス大王が東方遠征の途上で、この地にギリシア人の入植地を建設しました。「最果ての」という意味を冠したアレクサンドリア・エスハテと名付けられたこの都市は、シルダリヤ川の北方に住むスキタイ民族に対する最前線の砦としての役割を担いました。

その後、ホジェンドはペルシアの支配下に入る時代が長く続きましたが、8世紀にはアラブ人の勢力圏に入り、この頃から「ホジェンド」という名で呼ばれるようになったと考えられています。10世紀には中央アジア有数の交易・文化の中心地として繁栄を迎えました。しかし、13世紀初頭には強大なモンゴル帝国の侵攻を受けます。ホラズム・シャー朝の有能な将軍であったティムール・メリクは、このホジェンドの地で奮戦し、モンゴル軍に抵抗を試みました。14世紀にはモンゴル帝国崩壊後に台頭したティムール朝の支配下に入ります。

ティムール朝の衰退後はブハラ・ハン国の支配を経て、1866年に帝政ロシアによって併合されました。ソビエト連邦が成立すると、前述の通りレニナバードへと改称されます。1991年のソ連崩壊とタジキスタンの独立後、都市名は再びホジェンドに戻され、現在に至ります。近代の出来事としては、1997年に市内の刑務所で受刑者による抗議行動が発生しています。

地理的には、ホジェンドはタジキスタンの首都ドゥシャンベから北東へ約200km離れた場所に位置しています。都市はトルキスタン山脈とモゴルタウ山脈に挟まれた地域にあり、肥沃なフェルガナ峡谷への重要な入口となっています。市のすぐ近くには広大なカイラックム貯水池があり、その畔を中央アジアの大河であるシルダリヤ川が悠然と流れています。この豊かな水源と地理的な位置が、古来よりこの地を要衝としてきました。

都市に暮らす人々の構成は多様です。2010年の国勢調査によると、住民の約84%がタジク人、約14%がウズベク人であり、その他ロシア人などが約1.6%を占めています。信仰の中心はイスラム教スンニ派です。

交通網に関しては、ホジェンドには空港があり、空路でのアクセスが可能です。また、隣国ウズベキスタンの歴史都市サマルカンドとの間には鉄道が敷かれています。道路網も整備されており、特にアンゾブトンネルを経由することで、首都ドゥシャンベや、ゼラフシャン川渓谷に位置するパンジケントといった主要都市と結ばれています。

国際的な交流も積極的に行われており、カザフスタンのシムケント、ウズベキスタンのブハラ、サマルカンド、そしてイランのニシャプール、タブリーズといった歴史的に関連の深い都市と姉妹都市提携を結んでいます。

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