ヤクブ・ゴウォン

ヤクブ・ゴウォン：ナイジェリア動乱の時代を生きた軍人・政治家

ヤクブ・ゴウォン（1934年10月19日 - ）は、ナイジェリアの軍人、政治家です。彼は、1966年のクーデターで政権を掌握し、その後のビアフラ戦争を勝利に導きましたが、自身もまたクーデターによって政権を追われました。彼の生涯は、ナイジェリアの現代史における重要な出来事と深く関わっています。

生い立ちと軍歴

ゴウォンは、ナイジェリア北部州（当時）のプラトー州で、キリスト教徒のアンガス人として生まれました。ザリアで育ち、1954年に21歳で軍に入隊。サンドハースト王立陸軍士官学校などで学び、1960年代には国連平和維持軍の一員としてコンゴ民主共和国にも派遣されました。1966年には中佐に昇進しています。

クーデターによる政権掌握

1966年1月、ナイジェリアで最初のクーデターが発生。この時、ゴウォンは政治とは無縁の軍人でしたが、北部出身のキリスト教徒という立場から、各方面の勢力に受け入れられやすい存在でした。クーデター後、ジョンソン・アグイイ＝イロンシが政権を掌握しますが、同年7月には北部勢力によるクーデターが発生。イロンシは殺害され、ゴウォンが後継として大統領に就任しました。

ビアフラ戦争

ゴウォンの政権掌握後、ナイジェリア国内の民族対立が激化します。特に、イボ人が多数を占める東部州は、連邦政府からの分離独立を主張。1967年5月、ビアフラ共和国として独立を宣言し、ビアフラ戦争が勃発しました。

ゴウォン率いる連邦政府軍は、当初こそ苦戦したものの、次第に優勢となり、ビアフラへの補給路を遮断。その結果、ビアフラでは150万人もの人々が餓死や病死で命を落としました。1970年1月、ビアフラ政府が降伏し、戦争は終結しました。

戦後と失脚

戦後、ゴウォンは国内融和政策を推進し、イボ人への迫害を抑制しました。また、石油価格の高騰により、ナイジェリアは経済的に潤い、ゴウォンは国内のインフラ整備を進めました。しかし、政府の腐敗や肥大化が進み、国民の不満が高まります。

1974年、ゴウォンは1976年に予定されていた民政移管の延期を発表。これに対し、軍内部の穏健派が反発し、1975年7月、ムルタラ・ムハンマドによるクーデターが発生。ゴウォンはウガンダ訪問中に失脚し、イギリスへ亡命しました。

亡命と帰国、そして晩年

亡命後、ゴウォンはイギリスで生活し、1980年代にナイジェリアに帰国しました。2000年代に入ると、ガーナの大統領選挙の監視員を務めるなど、アフリカ政界の元勲として活動しています。

ヤクブ・ゴウォンの生涯は、ナイジェリアの激動の時代を象徴しています。彼は、クーデターで政権を掌握し、ビアフラ戦争を勝利に導きましたが、自身もまたクーデターによって失脚しました。彼の功績と過ちは、ナイジェリアの歴史において、深く刻まれています。

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