ヤコブヘル

ヤコブヘルについて

ヤコブヘル（Yaqub-Har, 紀元前1638年頃? - 1630年頃?）は古代エジプト第2中間期に存在したファラオであり、彼の統治に関する情報は現在も多くの謎に包まれています。彼に関する主要な証拠は、27個のスカラベ印章のみであり、他の資料ではその王朝の特定が難しい状況です。

史料の限界

ヤコブヘルに関して最も信頼性の高い資料とされるトリノ王名表は、非常に損傷が激しく、特に第13王朝以降の部分では記載が欠損しているため、彼の名前がどのように記載されているかを知ることは困難です。また、もう一つの歴史資料であるマネトーの『エジプト史』は古代ギリシャ語で執筆されており、その中でのヤコブヘルの名前は発音が改変されているため、他の王に当てはめる際には混乱が生じやすいです。

第14王朝説

ヤコブヘルが第14王朝に属していたとする説があります。この説によると、彼は第13王朝から独立し、デルタ地域を支配していた王であるとされています。この理論の根拠の一つとして、ヒクソス系第15王朝の王たちが「外国の支配者」という意味を持つ称号を持っていたのに対し、ヤコブヘルにはそのような呼称が見られないことが挙げられます。また、彼の印章には「メルウセルラー」という即位名が常に付随しており、これはヒクソス系の王たちとは異なる形式です。

第15王朝説

一方で、ヤコブヘルが第15王朝に属していたという説も存在します。こちらの考え方では、彼はヒクソス系諸侯の盟主と見なされる王であり、その証拠として、彼の印章の様式が第15王朝のキアンのものと非常によく似ている点が挙げられます。この説では、ヤコブヘルの後にシェシという王が続いているとされ、シェシは第15王朝の初代王とされています。

結論

ヤコブヘルに関する研究は非常に複雑で多くの謎が残されています。彼がどの王朝に属していたのか、どのような影響を及ぼしたのかは、今後の考古学的発見や研究に依存しています。彼の統治時代は古代エジプトの歴史において重要な位置を占めており、それゆえさらなる調査が必要とされています。

参考文献

• - ピーター・クレイトン『古代エジプトファラオ歴代誌』吉村作治監修、藤沢邦子訳、創元社、1999年4月。ISBN 978-4-422-21512-9。
• - エイダン・ドドソン、ディアン・ヒルトン『全系図付エジプト歴代王朝史』池田裕訳、東洋書林、2012年5月。ISBN 978-4-88721-798-0。
• - K.S.B. Ryholt, The Political Situation in Egypt during the Second Intermediate Period, c.1800-1550 BC (Carsten Niebuhr Institute Publications, vol. 20. Copenhagen: Museum Tusculanum Press, 1997)。

もう一度検索