ヤッファ条約 (1192年)

ヤッファ条約とは

ヤッファ条約は、1192年9月1日または2日に、アイユーブ朝のサラディンとイングランド王リチャード1世の間で締結された休戦協定です。この条約は、第三回十字軍の終結をもたらし、中東の政治状況に大きな影響を与えました。

条約締結の背景

1189年から1191年にかけてのアッコン包囲戦後、リチャード1世とサラディンは、第三回十字軍の終結に向けて何度も交渉を行いました。しかし、エルサレムの所有権や宗教的権利を巡る意見の相違から、なかなか合意に至ることができませんでした。

リチャード1世は、イングランド王国の危機的状況のため、早期の帰国を望んでおり、サラディンもまた、国内の問題を抱えていたため、両者とも和平を望む状況でした。そこで、エルサレム王国のバリアン・ディブランとの交渉を経て、ヤッファ条約が締結されました。

条約の内容

ヤッファ条約の主な内容は以下の通りです。

1. エルサレムの地位: エルサレムはイスラム勢力の支配下に置かれるものの、キリスト教徒の巡礼は認められました。これにより、キリスト教徒とイスラム教徒の安全な往来が保障されました。
2. 領土の確定: ティルスからヤッファまでの沿岸部はキリスト教徒が支配することになりました。これにより、1187年のヒッティーンの戦いでほぼ全領土を失ったエルサレム王国は、この沿岸部に縮小することになりました。アスカロンの要塞は破壊され、町はサラディンに返還されました。
3. 停戦期間: 両軍の間で3年間の停戦が合意されました。

この条約により、第三回十字軍は終結し、リチャード1世はイングランドへ帰国しました。ヤッファ条約は、エルサレムの地位や領土問題に関する重要な取り決めであり、中東の政治情勢に大きな影響を与えました。

1229年の条約との相違

1229年にも、テル・エル＝アジュールとヤッファで同様の条約が締結されました。これらの条約は、第六回十字軍の終結をもたらし、アイユーブ朝の内部紛争を解決する役割を果たしました。アル＝カーミルが神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世と外交協定を結ぶことを可能にしました。

まとめ

ヤッファ条約は、十字軍の歴史において重要な転換点となりました。この条約は、宗教的な対立を抱えながらも、現実的な政治判断に基づいて締結されたものであり、中東の平和と安定に一定の貢献を果たしたと考えられています。

参考文献

Richard, Jean. The Crusades, p. 328.
Tyerman, Christopher. The Crusades. pp. 461, 471
Riley-Smith, Jonathan. The Crusades, p. 146
Axelrod, Alan and Charles L. Phillips, editors. "Encyclopedia of Historical Treaties and Alliances, Vol. 1". Zenda Inc., New York, 2001. ISBN 0-8160-3090-1.

関連項目

* 条約の一覧

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