ヤブタビラコ

ヤブタビラコ（Lapsanastrum humile）

ヤブタビラコは、キク科ヤブタビラコ属の越年生草本です。かつては Lapsana 属に分類されていましたが、現在では Lapsanastrum 属に分類されています。湿った場所を好み、日本では北海道から九州まで広く分布しています。

特徴

草姿: 全体的に柔らかい印象の草本で、越年生です。多数の葉を根元から出し、ロゼット状に広がります。
葉: 根出葉は広倒披針形をしており、長さは3.6〜26cmと個体差があります。葉は羽状に深く裂けています。
花期: 5月から7月にかけて開花します。
花茎: 花茎は斜め上、または地面を這うように伸び、長さは9〜50cmに達します。
花序: 疎な散房状の花序を形成し、個々の花の間隔が広いです。
総苞: 総苞は長さ3.5〜4.5mmで、8枚の総苞内片に覆われています。
小花: 頭花には18〜20個の小花が含まれ、すべて黄色い舌状花です。花冠の長さは約3.3mm。
果実: 開花後、果柄は曲がり、下向きになります。果柄の長さは6〜37mm。
痩果: 痩果（種子に見える部分）は長さ2〜2.8mmで、先端に鉤状の突起はなく、くぼみがあります。

分布と生育環境

日本国内では、北海道から九州にかけて分布しています。国外では、朝鮮半島の済州島や中国でも確認されています。

たんぼ道や藪の陰など、湿り気のある場所に生育します。近縁種のコオニタビラコが水田に多いのに対し、ヤブタビラコは水田そのものにはあまり見られません。水田の周辺や、疎林の木陰などに生育することが多いようです。

分類

本種は、かつては Lapsana 属に分類されていましたが、分子系統学的研究の結果、Lapsanastrum 属に移されました。Lapsana 属の植物は、日本ではナタネタビラコが帰化植物として記録されているのみです。

コオニタビラコも、かつてはヤブタビラコと同属とされていましたが、現在ではヤブタビラコとともに Lapsanastrum 属に分類されています。ヤブタビラコとコオニタビラコの違いとして、ヤブタビラコの総苞内片が8個であるのに対し、コオニタビラコは5個であること、また、痩果の先に鉤状の突起があることなどが挙げられます。また、全体的な大きさや頭花の大きさも、ヤブタビラコの方が一回り大きいです。

近年では、ヤブタビラコを含む Lapsanastrum 属をオニタビラコ属にまとめる説も提唱されています。

参考文献

大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 5 ヒルガオ科～スイカズラ科』、(2017)、平凡社
佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本III 合弁花類』,(1981),平凡社
牧野富太郎原著、『新分類 牧野日本植物図鑑』、(2017)、北隆館
* 北村四郎他、『原色日本植物図鑑・草本編I』改訂66刷、(1994)、保育社

もう一度検索