ヤマナラシ

ヤマナラシ（山鳴らし）

ヤマナラシ（学名: Populus tremula var. sieboldii）は、ヤナギ科ヤマナラシ属の落葉高木です。丘陵や山地に自生し、その名の由来は、わずかな風でも葉が揺れて音を出すことにあります。別名として、箱の材料に使われたことからハコヤナギ（箱柳、白楊）とも呼ばれます。

分布

日本固有種であり、北海道から九州にかけて分布しています。主に丘陵や山地に自生しています。

形態・生態

落葉広葉樹の高木で、樹高は10 - 25メートルに達します。大きく成長した木は一本立ちすることが多いです。樹皮は灰白色で菱形の皮目が目立ちますが、老木になると黒みを帯びて縦に裂けます。若木の樹皮は白みが強く、触ると白い粉がつきます。一年枝は初め白い毛がありますが、後に無毛になり、短枝もよく出ます。

葉は互生し、7 - 15センチメートル程度の広楕円形から菱状卵形で、下面は灰白色をしています。風がなくても葉が擦れる音が聞こえ、強風時には大きくザワザワと音を立てます。

花期は春（3 - 4月）で、雌雄異株です。葉が展開する前に、褐色の5 - 11センチメートル程度の雄花穂が5 - 6本束になって枝先に下垂します。

冬芽は鱗芽で互生し、卵形や長卵形で先が尖っています。芽鱗は多数で白い毛があり、ややべたつきます。枝先につく頂芽は通常葉芽です。葉痕は半円形や三角形で、維管束痕が3個あります。

利用

街路樹として植えられることがあります。材は柔らかく、耐荷重性を必要とする建築材には適していません。また、木目も装飾的な特性を持たないため、工芸品などにもあまり利用されません。

ヤマナラシ属の一部は英語で「アスペン（Aspen）」と呼ばれます。日本において「アスペン」という言葉は、箱、マッチの軸木、製紙用パルプ原料、OSB合板、経木真田、割り箸などの用材の呼称として広まっています。しかし、これらの用途に使用される材は、本種ではなく、ユーラシア大陸に広く自生するヨーロッパヤマナラシ（Populus tremula）や、北米に自生するアメリカヤマナラシ（Populus tremuloides）など、主に中国、ロシア、カナダなどで産出された安価な輸入材です。

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、207頁。ISBN 978-4-416-61438-9。 

関連項目

木の一覧

外部リンク

* ヤナマラシ（植物雑学事典） - ウェイバックマシン（2002年7月4日アーカイブ分）

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