ヤマボウシ

ヤマボウシ：日本の山林を彩る美しい落葉樹

ヤマボウシ（学名: Cornus kousa subsp. kousa）は、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属に分類される落葉小高木から中高木です。初夏を代表する花木として知られ、白く美しい花びらのように見える総苞片が特徴です。その美しい花、甘酸っぱい実、そして秋の紅[[葉]]と、一年を通して観賞価値の高いヤマボウシは、山林だけでなく、街路樹や庭木としても広く利用されています。

名前と由来

和名「ヤマボウシ」は、中心部に集まった多数の花を僧侶の丸坊主頭に、白い総苞片を頭巾に見立てたことに由来するといわれています。まさに「山に咲く法師」といった風情です。

地域によっては、クワの実に似た赤い実から「ヤマグワ」と呼ばれたり、実の色や形から「ヤマボウ」「ヤマモモ」「ダンゴギ」「シゾウアタマ」など、様々な地方名や別名で親しまれています。また、子どもの口に合わない酸味から「ワランベナカセ（童泣かせ）」というユニークな名前で呼ばれる地域もあるようです。箱根では古くから「クサ」と呼ばれており、学名の種小名 kousa はこの呼び名に由来しています。花言葉は「友情」です。

分布と生育環境

ヤマボウシは、日本では本州の東北地方南部から九州、琉球諸島まで広く分布し、国外では朝鮮半島や中国にも自生しています。山地や野山のやや湿った林縁を好んで生育し、耐寒性も強く、北海道の札幌周辺でも栽培可能です。ハナミズキよりも寒さに強いという特徴があります。

樹木の形態と生態

樹高は通常5～10メートル、幹の直径は50センチ[[メートル]]程度ですが、稀に15メートル、直径70センチ[[メートル]]に達する大木になることもあります。株立ち状のものと、1本立ちのものがあります。成木の樹皮は灰褐色で不規則に剥がれ落ち、独特の斑模様になります。

葉は対生し、卵状楕円形で先端が尖り、長さ4～12センチ[[メートル]]、幅4～7センチ[[メートル]]です。葉縁は全縁でやや波打ち、表面は濃緑色で裏面は白みがかっています。秋には紅[[葉]]し、赤、黄、橙、紫褐色など様々な色に変化します。葉脈の部分の色づき方なども様々で、複雑で美しい紅[[葉]]を見せます。

花期は5～7月で、ハナミズキよりやや遅く開花します。葉が完全に展開した後に、枝先に多数の白い総苞片をつけます。この総苞片が花びらのように見えますが、実際の花は中心部に密集した小さな淡黄緑色の花です。ハナミズキとよく似ていますが、総苞片の先端が尖っていることで見分けることができます。花付きが非常に良く、満開時には枝がたわむほどです。

果期は9～10月で、直径1～3センチ[[メートル]]の球形の集合果をつけます。赤く熟した果実は甘味があり食用となり、マンゴーのような風味も感じられます。果皮はシャリシャリとした食感で、生食や果実酒にも利用できます。種子は乳白色で、1個の果実に約8個入っています。ハナミズキの実は集合果ではなく、個々の果実が分離している点が異なります。

落葉期には冬芽ができ、頂芽と側芽が形成されます。花芽は球形で暗褐色、葉芽は細長い円錐形で暗褐色で、どちらも芽鱗に包まれています。

栽培方法

西日を嫌うため、東～南向きの場所に植えるのが理想的です。水はけの良い、常に湿り気のある場所を好みます。土壌は、日当たりの良い、適度に湿った砂壌土が適しています。植栽適期は2～3月、または10月中旬～11月です。樹形は自然と整いますが、不要な枝は1月中旬～3月中旬、または9月中旬～10月中旬に剪定します。害虫としてはアブラムシ、カイガラムシなどがおり、すす病を誘発することがあります。また、テッポウムシの被害にも注意が必要です。一方、ハナミズキ炭疽病に対しては抵抗性があるため、この病気が蔓延している地域では、ハナミズキの代替樹種として利用されることもあります。

品種

近年は品種改良が進み、「ビッグアップル」（実の大きな品種）、「ウルフアイ」（斑入りの品種）、「源平」「サトミ」（赤みがかった花）、「金陽」（黄色の花）など、様々な品種が流通しています。「トキワヤマボウシ」や「ホンコンエンシス」と呼ばれる常緑の品種は、中国原産の別種です。

利用方法

ヤマボウシは、街路樹、庭園樹、公園樹として広く利用されています。あまり大きくならないため、庭木にも適しています。ハナミズキとは異なり、葉が出た後に花が咲くため、落ち着いた雰囲気を醸し出します。材は堅く、器具材として利用できます。若葉は食用になり、果実は生食だけでなく、ジャムや果実酒などにも利用できます。ハナミズキの果実は有毒ですが、ヤマボウシの果実は安全に食べられるため、公園など公共の場ではヤマボウシがハナミズキに代わって植えられるケースも増えています。

市町村の木

ヤマボウシは、宮城県栗原市、新潟県胎内市、兵庫県宝塚市、福岡県直方市、長崎県雲仙市など多くの市町村で市町村の木に指定されています。

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