ハナミズキ

ハナミズキ：日本の風景に溶け込んだ北米原産の美木

ハナミズキ(学名: Cornus florida)は、ミズキ科ミズキ属に分類される落葉性の小高木から高木です。アメリカヤマボウシという標準和名でも知られ、北アメリカ東部が原産地です。日本では、1912年に日本からアメリカ合衆国へ送られた桜の返礼として贈られたことで有名です。その美しい花と紅葉から、街路樹や庭木として広く植栽され、日本の風景にすっかりと溶け込んでいます。

由来と名前の謎

和名の「ハナミズキ」は、ミズキの仲間で、花がミズキよりも大きく美しく目立つことに由来します。「アメリカヤマボウシ」という別名は、原産地と日本のヤマボウシとの類似性からきています。一方、英語名であるdogwoodは、樹皮の煮汁がかつて犬の皮膚病治療に使われたという説や、堅い木質が木の串に使われたという説など、複数の語源が提唱されています。

生育環境と分布

ハナミズキは北アメリカ東部、主にアメリカ合衆国東海岸からミシシッピ川流域にかけて自生しています。山岳部や西海岸には分布していません。日本では全国各地で植栽されており、特に都市部では公園や街路樹として多く見られます。

開花時期は4月下旬から5月上旬で、ヤマボウシよりも早いのが特徴です。開花は南部のジョージア州から始まり、北部のメイン州へと北上していく様子は「ハナミズキ前線」として報道されることもあります。特に、アパラチア山脈南部では、野生ハナミズキの開花が春の風物詩となっています。日本の桜前線のような現象と言えるでしょう。

形態と生態

樹高は日本では3～8メートルほどですが、原産地では12メートルに達することもあります。成木の樹皮は灰白色から灰黒色で、細かく深い割れ目が入っています。葉は対生し、卵形や楕円形で、秋には鮮やかな紅葉を見せます。紅葉は濃い赤色で、葉裏の緑色が残るグラデーションが美しく、他の樹種よりも紅葉が早いことも特徴です。

ハナミズキの花弁のように見える部分は、実際には総苞片です。中心にある小さな花が多数集まった花序を、4枚の総苞片が取り囲んでいます。総苞片の先端はくぼんでおり、白い花には紅色が差すこともあります。小さな花は直径約5ミリ[[メートル]]で、4枚の花弁を持ちます。

果実は核果で、秋に赤く熟します。長さ1センチメートルほどの楕円形や卵球形で、落葉後も枝に残ります。冬芽は短く白い毛に覆われ、粉を吹いたような外観です。葉芽は細長い円錐形で、花芽はやや偏平な球形をしています。

人間との関わり

ハナミズキは、その美しい花と紅葉から、庭木や公園樹、街路樹として広く利用されています。しかし、うどんこ病やアメリカシロヒトリの食害に遭いやすいという点には注意が必要です。また、ハナミズキ炭疽病という深刻な病害も存在し、感染した街路樹は、抵抗性のあるヤマボウシやハナミズキとヤマボウシの交配種に植え替えられることもあります。

日本におけるハナミズキの歴史

日本におけるハナミズキの植栽は、1912年に東京市長であった尾崎行雄がワシントンD.C.に桜を贈った返礼として、1915年にワシントン市から贈られたのが始まりです。贈られた60本の苗木のうち、白花が40本、ピンク花が20本で、日比谷公園や小石川植物園などに植えられました。第二次世界大戦中には多くの木が伐採されましたが、現在も東京都立園芸高等学校などに原木が保存されています。2012年には、桜の贈呈100周年を記念して、再びアメリカからハナミズキが贈られました。

シンボルとしてのハナミズキ

ハナミズキは、多くの自治体で市の木や区の木に指定されています。また、アメリカ合衆国ノースカロライナ州では州花、バージニア州では州の木と州花に指定されています。

伝説と文化

ハナミズキには、イエス・キリストの十字架に使われたという伝説があります。この伝説は、20世紀半ばに登場した比較的新しいもので、聖書には記述されていません。

ハナミズキを題材とした作品

ハナミズキは、一青窈の楽曲「ハナミズキ」や、槇原敬之の楽曲「花水木」など、多くの作品にも取り上げられています。

参考文献

（参考文献リストは省略）

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