ヤマモガシ科

ヤマモガシ科（Proteaceae）

ヤマモガシ科は、双子葉植物に属する科であり、およそ75から80の属と1600種ほどを含みます。その多様性の中心は、現在の南アフリカとオーストラリアにあります。日本においては、ヤマモガシ（Helicia cochinchinensis Lour.）一種のみが野生し、その分布は東南アジアから西南日本にかけて広がっています。

分布と進化

ヤマモガシ科の植物は、かつてゴンドワナ大陸の一部であった南米、南アフリカ、インド、オーストラリア、ニューカレドニア、ニュージーランドといった地域に分布しています。ニュージーランド南島の白亜紀の地層からヤマモガシ科の花粉が発見されていることから、この科はゴンドワナ大陸で進化したと考えられています。

形態

ヤマモガシ科の植物は、ほとんどが常緑性の木本ですが、一部には草本も存在します。花は両性花で、花被（萼と花弁の区別がない）は筒状で先端が4つに裂けており、それぞれの裂片に雄しべが1つずつ付いています。雌しべは1つで子房上位であり、果実は堅果などになります。花序は総状、穂状、頭状など、多様な形態を示します。

生態

ヤマモガシ科の植物は、リン欠乏に対する適応として、根を特殊な形状に変化させることが知られています。この根はクラスター根と呼ばれ、土壌中に有機酸を分泌することで、植物が通常利用できない形態のリンを溶解し、吸収します。この適応により、リンに乏しい環境でも生育が可能です。また、乾燥地に適応した種も多く存在します。

山火事が頻発するオーストラリアに分布する種の中には、山火事の熱によって果実が開き、種子を散布する仕組みを持つものがあります。山火事後の環境を利用することで、生存の機会を増やしています。また、樹皮を厚くしたり、地下部に栄養を蓄えたりすることで、山火事からの再生能力を高めている種もいます。

昆虫との関わり

ヤマモガシ科の植物は、多くの昆虫に利用されています。日本産のヤマモガシは、サツマニシキという蛾の幼虫の食草として知られています。

人間との関わり

プロテア、バンクシア、マカダミアなどの属がヤマモガシ科に含まれます。マカダミア（マカダミアナッツ）は食用として栽培されており、その他にも観賞用として多くの種が栽培されています。

分類

ヤマモガシ科の系統は、かつては独立のヤマモガシ目とされていましたが、近年の分子系統学的研究により、スズカケノキ科やハス科と近縁であることが明らかになりました。下位分類としては、いくつかの亜科が認められています。

Bellendenoideae亜科
Persoonioideae亜科
Symphionematoideae亜科
Proteoideae亜科
Grevilleoideae亜科

これらの亜科の下には、さらに連（Tribe）や亜連（Subtribe）といった分類が設けられています。

日本に自生するヤマモガシ

日本に自生するヤマモガシは、本州（静岡県以西）、四国、九州、沖縄に分布する常緑高木です。暖地の forest に生育し、高さは10mほどになります。葉は互生で、長さ8～15cmの長楕円形をしています。花は、5～6月に咲き、黄白色の小さな花が穂状に多数付きます。果実は、秋に赤く熟します。

ヤマモガシの木材は、建築材や器具材として利用されます。また、庭木としても植栽されます。

ヤマモガシは、日本の暖地の自然を代表する植物の一つです。

脚注

ヤマモガシ科は多様な進化を遂げた植物群であり、その生態や分類は現在も研究が進められています。
クラスター根は、リン欠乏環境における植物の生存戦略を示す興味深い例です。
山火事と植物の関係は、自然界の相互作用の複雑さを示しています。

関連項目

プロテア
バンクシア
マカダミア
クラスター根

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