ヤンボル

ヤンボル

ブルガリア共和国南部に位置するヤンボルは、同名のヤンボル州の州都です。黒海に面した主要都市ブルガスからは西へおよそ100キロメートルの距離にあります。地理的には、ブルガリア南部を広がるトラキア平原の一角を占め、市街はトゥンジャ川とモチュリツァ川が合流する地点の南岸に開けています。気候は温暖湿潤であり、四季の変化が比較的はっきりしています。

歴史

ヤンボルはブルガリア国内でも特に長い歴史を持つ都市の一つとして知られ、考古学的な調査により新石器時代からこの地に人類が定住していた痕跡が確認されています。その直接的な起源は、古代トラキア人によって建設された都市「カビレ」にあるとされています。カビレは軍事的な重要性が高く、かつてはマケドニア王ピリッポス2世が要塞を築いた戦略拠点でした。トラキア人の王セウテス3世の都であったセウトポリス遺跡で出土した碑文にもカビレの名が記されており、また紀元前341年にアテナイの雄弁家デモステネスが行った演説の中で、マケドニアの支配下にある都市の一つとして言及されています。

ローマ帝国がこの地を支配すると、カビレは交通の要衝として栄えましたが、帝国の衰退期には北方の様々な民族による侵攻に晒され、荒廃が進みました。293年には当時のローマ皇帝ディオクレティアヌスにちなみ、「ディオスポリス（DiosPolis）」と改称されましたが、378年にはゴート族の攻撃を受けて再び破壊されました。

10世紀から14世紀にかけて、この地は「ディアンポリス（Diampolis）」の名で再建され、ブルガリア帝国と東ローマ帝国（ビザンツ帝国）の間で帰属を巡る激しい争奪の舞台となりました。中世を通じて、ディアンポリスのほか、「ドゥブリン」や「ヤンポリス」など様々な呼称で呼ばれたことが記録に残っており、特に1357年の史料にはドゥブリンの名が確認できます。都市がオスマン帝国の支配下に入ったのは1373年のことで、その後約100年を経た1479年に現在の名称である「ヤンボル」に改められました。

近代に入ると、1829年の露土戦争ではヤンボルは戦場の一つとなり、多くのブルガリア人住民がロシアへ避難を余儀なくされましたが、同時にこの町は反オスマン勢力が集結する重要な拠点ともなりました。1878年にロシア軍によってオスマン帝国の支配から解放され、ブルガリアとロシア両国の友好を記念して壮麗な聖アレクサンドル・ネフスキー大聖堂が建てられました。19世紀末の1890年代半ばには、黒海沿岸の主要都市ブルガスとの間に重要な鉄道路線が開通し、地域の交通網における重要性が一層高まりました。20世紀に入ると、ヤンボルは療養効果があるとされる鉱泉地としても知られるようになりました。

社会と経済

2001年の国勢調査によれば、ヤンボル市住民のエスニック・アイデンティティの構成は以下の通りです。

ブルガリア人 - 59,899人 （87.1%）
ロマニ系ブルガリア人 - 4,263人（6.2%）
トルコ系ブルガリア人 - 3,185人（4.6%）
その他 - 296人 （0.4%）
定義不可 - 1,101人（1.6%）
回答無し - 11,718人（※全体の8.5%に相当しますが、他の項目との合計が一致しないため、国勢調査上の集計上の特徴と考えられます。）

ヤンボルの経済は、タバコ加工、缶詰製造、繊維産業、化学工業などが主軸となっています。また、周辺地域の豊かな農産物の集散地としても機能しており、かつてはトゥンジャ川を利用した水運も行われ、周辺で生産される羊毛やブドウ酒などの物資の集積・出荷が行われていました。

姉妹都市

ヤンボル市は、以下の都市と姉妹都市関係を結んでいます。

トゥルグ・ジウ（ルーマニア）
ヴィルジュイフ（フランス）
シェラツ（ポーランド）
イジェフスク（ロシア連邦ウドムルト共和国）
ベルジャーンシク（ウクライナ）
エディルネ（トルコ）

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