ユキノシタ

ユキノシタ（雪の下）

特徴

ユキノシタは、ユキノシタ科ユキノシタ属の多年草で、日本や中国に分布しています。山地の湿った場所や、人家の庭の陰などに自生し、独特の姿で親しまれています。

葉

円形に近い腎臓形の葉は、表面に灰白色の斑が入り、裏面は赤みを帯びています。葉の縁には浅い切れ込みがあり、全体的に粗い毛が生えています。これらの特徴的な葉は、観賞用としても楽しまれています。

花

初夏になると、高さ20～50cmほどの花茎を伸ばし、白い花を咲かせます。花は5弁で、上の3枚は小さく濃紅色の斑点があり、下の2枚は大きくて白色で垂れ下がっているのが特徴です。この花弁の形から、「雪の舌」と表現されることもあります。

増え方

ユキノシタは、種子による繁殖だけでなく、地上茎である走出枝（ランナー）を伸ばして、先端から新たな株を作ることで繁殖します。このため、群生することが多く、庭などで栽培する際は注意が必要です。

名称の由来

ユキノシタという名前の由来には、いくつかの説があります。

雪の下でも緑の葉を保つことから
白い花を雪に見立て、その下に緑の葉があることから
葉の白い斑を雪に見立てた
垂れ下がった花弁を舌に見立てて「雪の舌」

学名の「stolonifera」は、走出枝（ストロン）で増えることに由来します。また、ドイツ語の「ユーデンバールト」（ユダヤ人のひげ）、英語の「マザー・オブ・サウザンス」（子宝草）も、糸状に伸びる走出枝から連想された名前です。中国植物名の「虎耳草」は、葉の形や模様が虎の耳に似ていることに由来します。

日本では、地域によって「イドグサ」「イトバス」など様々な方言名で呼ばれています。

分布と生育地

ユキノシタは、日本と中国が原産で、日本では北海道から九州まで広く分布しています。平地から山地まで生育し、谷川の近くや、雑木林、岩場などに自生しています。また、人家の庭や石垣などにも栽培されています。

利用

観賞用

ユキノシタは、独特の葉の模様や花の形が美しいことから、観賞用として庭に植えられています。特に、斑入りの品種が人気です。

食用

ユキノシタの葉は、山菜として食用にされます。春から初夏にかけての若い葉を、天ぷらやおひたし、和え物などにして食べます。クセのない味で、様々な料理に利用できます。花も食用にでき、天ぷらや塩漬けなどにされます。

薬用

ユキノシタは、古くから民間薬としても利用されてきました。葉には硝酸カリウムやベルゲニンなどの成分が含まれており、利尿作用や健胃作用があるとされています。生の葉を火であぶって腫れ物に貼ったり、絞り汁を中耳炎に用いたり、煎じた汁を痔に使うなどの方法があります。

生薬としてのユキノシタ

ユキノシタの葉を乾燥させたものは、「虎耳草（こじそう）」という生薬として用いられます。虎耳草は、むくみや胃もたれ、下痢などの症状を改善する効果があるとされています。

近縁種

ユキノシタには、いくつかの近縁種が存在します。

ダイモンジソウ (Saxifraga fortunei var. alpina)：渓流沿いに生え、花が「大」の字に見える。
ハルユキノシタ (Saxifraga nipponica)：4～5月頃に咲き、葉が光沢のある黄緑色で斑点がない。
ホシザキユキノシタ（Saxifraga stolonifera f. aptera)：花弁が短く星形に開く。
アオユキノシタ（Saxifraga stolonifera f. viridifolia)：斑が入らない園芸品種。

その他

ユキノシタの葉の裏側の表皮細胞は、原形質分離の観察によく用いられます。これは、赤い色素を含むため、細胞の変化が観察しやすいためです。

ユキノシタは、その独特の姿と様々な利用法から、古くから人々の生活に寄り添ってきた植物です。

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