ユキノシタ属

ユキノシタ属とは

ユキノシタ属（学名：Saxifraga）は、ユキノシタ科に属する植物のグループです。以前はバラ目に分類されていましたが、現在ではユキノシタ目とされています。この属は、主に多年草ですが、まれに一年草も含まれます。世界には約300種が知られており、その多くは北半球の温帯から寒帯にかけて分布しています。また、アフリカ、アジアの熱帯、南アメリカにも少数種が分布しています。

特徴

ユキノシタ属の植物は、その形態や生態にいくつかの共通点を持っています。

形態: 植物体には腺毛が生えているものが多く見られます。葉は単葉で、落葉性です。
萼: 萼片は基部で合着し、皿形または鐘形の萼筒を形成します。
花: 花は放射相称または左右相称です。左右相称の花では、下側の2つの花弁が他の3つよりも長くなっています。花弁は通常5枚で、白色、黄色、淡紅色などがあり、しばしば紫色や濃黄色の斑点が見られます。
雄しべと雌しべ: 雄しべは10個あります。雌しべは通常2個の心皮からなりますが、3〜6個の場合もあります。子房は上位または中位です。
種子: 種子は小型で楕円形をしており、多数存在します。

日本におけるユキノシタ属

日本には16種のユキノシタ属の植物が分布しており、そのうちエゾノクモマグサ、フキユキノシタ、ジンジソウ、ハルユキノシタ、センダイソウ、エチゼンダイモンジソウの6種は日本固有種です。

チシマイワブキ属の独立

かつてユキノシタ属の亜属とされていたチシマイワブキ亜属は、2012年に秋山らによってチシマイワブキ属（Micranthes）として独立しました。日本産のチシマイワブキ属には、クロクモソウ、フキユキノシタ、クモマユキノシタ、チシマイワブキの4種が分類されています。

日本に分布する主な種

以下は、日本に分布するユキノシタ属の主な種です。

ムカゴユキノシタ (Saxifraga cernua)：葉の付け根にムカゴを付ける
キヨシソウ (Saxifraga bracteata)：苞葉が目立つ
クモマグサ (Saxifraga merkii var. idsuroei)：高山に生育
チシマクモマグサ (Saxifraga merkii var. merkii)：高山に生育
シコタンソウ (Saxifraga bronchialis subsp. funstonii var. rebunshirensis)：北海道に分布
ユウバリクモマグサ (Saxifraga bronchialis subsp. funstonii var. yuparensis)：夕張山地に分布
エゾノクモマグサ (Saxifraga nishidae)：北海道に分布する固有種
ヤマハナソウ (Saxifraga sachalinensis)：サハリンにも分布
ジンジソウ (Saxifraga cortusifolia)：関東以西に分布
ツルジンジソウ (Saxifraga cortusifolia var. stolonifera)：ジンジソウの変種
ハルユキノシタ (Saxifraga nipponica)：早春に開花
ユキノシタ (Saxifraga stolonifera)：葉の形が特徴的
ホシザキユキノシタ (Saxifraga stolonifera f. aptera)：ユキノシタの品種
センダイソウ (Saxifraga sendaica)：宮城県に多く分布
エチゼンダイモンジソウ (Saxifraga acerifolia)：越前地方に分布する固有種
ダイモンジソウ (Saxifraga fortunei var. alpina)：高地に分布
イズノシマダイモンジソウ (Saxifraga fortunei var. jotanii)：伊豆諸島に分布
ウチワダイモンジソウ (Saxifraga fortunei var. obtusocuneata)：葉がうちわ形
ナメラダイモンジソウ (Saxifraga fortunei var. suwoensis)：山口県に分布

日本近隣の国外の種

日本近隣の国外にも、以下のようなユキノシタ属の種が分布しています。

カラフトキヨシソウ (Saxifraga exilis)
ヘラユキノシタ (Saxifraga furumii)
シロバナクロクモソウ (Saxifraga manchuriensis)
チョウセンユキノシタ (Saxifraga octopetala)
ヒメキヨシソウ (Saxifraga rivularis)
シベリアユキノシタ (Saxifraga sibirica)

チシマイワブキ属として独立した主な種

チシマイワブキ属として独立した主な種は以下の通りです。

クロクモソウ (Micranthes fusca var. kikubuki)
エゾクロクモソウ (Micranthes fusca var. fusca)
チシマイワブキ (Micranthes nelsoniana var. reniformis)
タテヤマイワブキ (Micranthes nelsoniana var. tateyamensis)
フキユキノシタ (Micranthes japonica)
クモマユキノシタ (Micranthes laciniata)
チョウセンイワブキ (Micranthes oblongifolia)

まとめ

ユキノシタ属は、その多様な種と美しい花で、古くから人々に親しまれてきました。近年では、分類の見直しが進み、新たな発見もされています。今後もその研究は進み、より詳細な情報が明らかになることが期待されます。

参考資料

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本Ⅱ 離弁花類』（1982年）平凡社
米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）
植物研究雑誌, The Journal of Japanese Botany

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