ユタ戦争

ユタ戦争について

ユタ戦争（1857年 - 1858年）は、アメリカ合衆国のユタ州において末日聖徒イエス・キリスト教会（モルモン教）の信者とアメリカ陸軍との間に発生した内乱である。この戦争は、当時の社会的、宗教的緊張がもたらした結果であり、モルモン教徒の歴史において重要な一章を描いている。

背景

19世紀中盤、モルモン教徒は特異な宗教観と一夫多妻制を持ち、他のコミュニティとの関係は緊張を孕んでいた。彼らは、初期の教祖ジョセフ・スミス・ジュニアの指導のもと、1844年にイリノイ州で暴徒に襲撃され命を落としたことで、移動を余儀なくされていた。その後、ブリガム・ヤングのリーダーシップの下、1847年にはソルトレイクシティに新たな拠点を築いた。

しかし、教団が定住した後も、アメリカ西部への移民が続き、地域住民との間の緊張が高まった。連邦政府は、この教団が事実上の独立を試みる姿勢に対して圧力をかけるため、1850年にソルトレイク周辺をユタ準州に昇格させ、1857年には軍隊を派遣することになる。

戦争の概要

1857年の秋、アーカンソー州からカリフォルニアへの移動中の開拓団がソルトレイクシティの郊外に滞留した。この最中、教団内において誤った情報が広まり、開拓者の中に初代教祖を殺害した者がいるとのデマが流れた。この結果、モルモン教徒の一部が武装蜂起し、滞留地の開拓者を襲撃、ほとんどを虐殺する事件が発生した。この事件は「マウンテンメドウの虐殺」として知られる。

この虐殺を受けて、アメリカ陸軍は攻撃を開始し、戦闘が始まった。この戦争はユタ戦争と呼ばれるようになったが、軍が進出するも、その地域は補給が困難であり、教団側の反撃に苦しむ中で、冬を迎えることになった。孤立を避けるため、アメリカ陸軍は撤退を余儀なくされ、歴史的に見ても実質的な敗北とされる。この年の終わりには、両者の間で和平を模索する動きが広がった。

1858年になると、和平交渉が進められた結果、教団側は連邦政府の新たに派遣される知事を受け入れることで合意し、政府側はその戦争に関与した信者に対して処罰を行わないという妥協が成立した。

戦後の影響

ユタ戦争の終結後も、連邦政府はマウンテンメドウの虐殺について調査し、責任の所在を追及した。この虐殺事件の主導者は長らく教団に身を隠していたが、教団と政府の和解が進む中、彼は逮捕され、虐殺発生地で銃殺されることとなった。

教団はその後、非教徒との関係改善を目指し、1890年には一夫多妻制を法的には中断する決定を下す。これにより、教団と連邦政府との関係は徐々に改善され、歴史の中での重要な出来事として位置づけられるのである。

まとめ

ユタ戦争は、アメリカの西部開拓時代における社会的・宗教的な対立を象徴する出来事であった。モルモン教徒の独自の価値観や生活様式が、どのようにしてこのような内乱を引き起こしたのか、その背景を理解することは、アメリカの歴史を深く知る上で意義深いものである。

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