ユダヤ古代誌

概要

「ユダヤ古代誌」（ギリシャ語: Ἰουδαϊκὴ ἀρχαιολογία）は、古代ユダヤの歴史を記したフラウィウス・ヨセフスの著作です。この作品は、天地創造からユダヤ戦争の直前までをカバーする全20巻から構成されています。執筆は西暦94年または95年頃に行われ、主にギリシャ語で書かれています。これは、非ユダヤ人の読者を意識した結果であり、彼らにユダヤの歴史や文化への理解を促すことを目的としています。

各巻の内容

「ユダヤ古代誌」は、以下のように20の巻に分かれています：
1. 第1巻: 天地創造からイサクの死まで（全22章）
2. 第2巻: イサクの死から出エジプトまで（全16章）
3. 第3巻: 出エジプトから神の怒りまで（全15章）
4. 第4巻: 神の怒りからモーセの死まで（全8章）
5. 第5巻: モーセの死からエリの死まで（全11章）
6. 第6巻: エリの死からサウルの死まで（全14章）
7. 第7巻: サウルの死からダビデの死まで（全15章）
8. 第8巻: ダビデの死からアハブの死まで（全15章）
9. 第9巻: アハブの死からバビロン捕囚まで（全14章）
10. 第10巻: バビロン捕囚からキュロス2世の初年まで（全11章）
11. 第11巻: キュロス2世の初年からアレクサンドロス大王の死まで（全8章）
12. 第12巻: アレクサンドロス大王の死からユダ・マカバイの死まで（全11章）
13. 第13巻: ユダ・マカバイの死からアレクサンドラ女王の死まで（全16章）
14. 第14巻: アレクサンドラ女王の死からアンティゴノスの死まで（全16章）
15. 第15巻: アンティゴノスの死からヘロデ神殿の完成まで（全11章）
16. 第16巻: ヘロデ神殿の完成からアレクサンドロスとアリストブロスの死まで（全11章）
17. 第17巻: アレクサンドロスとアリストブロスの死からアルケラオスの追放まで（全13章）
18. 第18巻: アルケラオスの追放からパルティア領バビロニアにおける受難まで（全9章）
19. 第19巻: パルティア領バビロニアにおける受難からユダヤ属州長官クスピウス・ファドゥスまで（全9章）
20. 第20巻: ユダヤ属州長官クスピウス・ファドゥスからゲッシウス・フロールスまで（全11章）

執筆の動機

ヨセフスは、この作品を通じてユダヤ人に対する誤解を正し、彼らの歴史や文化が持つ重要性を強調しようとしました。彼は、ローマ帝国が描くユダヤ人のイメージを覆そうと努力し、ユダヤ人が偉大な歴史を有していることを示すことを目的としていました。また、ヨセフスは冒頭で言及するように、彼の目的は非ユダヤ人の敬意と理解を引き出すことでした。

キリスト教との関わり

「ユダヤ古代誌」には、イエス・キリストに関する言及があり、「フラウィウス証言」として知られる記述が存在します。この文書の真偽を巡っては学術的な議論が続いています。言及される内容は8文ほどで、イエスの存在を示す言及はあれど、その詳細には議論の余地があります。

影響と保存

「ユダヤ古代誌」は、ユダヤ教とキリスト教の中間時代における重要な歴史的資料となっています。古代から中世にかけて、多くのスクリプトが作成され、さまざまな言語に翻訳されていきました。日本語訳としては、秦剛平によるものが知られており、全6冊にまとめられています。

このように、「ユダヤ古代誌」は、ユダヤの歴史を理解する上で欠かせない重要な書物といえます。

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