ユッシ・ビョルリング

ユッシ・ビョルリング：20世紀最高のテノール歌手

ヨハン・ジョナタン・「ユッシ」・ビョルリング（Johan Jonathan "Jussi" Björling, 1911年2月5日 - 1960年9月9日）は、スウェーデン出身の20世紀を代表するテノール歌手の一人です。彼の歌声は、比類なき美しさと、心を揺さぶる表現力で、世界中のオペラファンを魅了しました。

生い立ちと音楽の道

ビョルリングは、テノール歌手である父から音楽の手ほどきを受けました。幼い頃から音楽的才能を発揮し、6歳で父と2人の兄と「ビョルリング男声四重唱団」を結成し、ボーイソプラノとして演奏活動を開始しました。アメリカでの演奏旅行も経験し、8歳で初録音を果たしています。1928年にはストックホルム王立音楽院に入学し、本格的に声楽を学びました。

オペラ歌手としての成功

1930年、ビョルリングはストックホルム王立歌劇場で、モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』のドン・オッターヴィオ役で正式にデビューを果たしました。王立歌劇場に所属しながら、精力的に録音活動を行い、その名声は世界中に広まりました。1936年にはウィーン国立歌劇場とザルツブルク音楽祭にデビューし、1938年にはアメリカのメトロポリタン歌劇場（通称メト）でプッチーニの『ラ・ボエーム』のロドルフォ役を歌い、アメリカデビューを果たしました。この成功を機に、ビョルリングは国際的な名声を確立し、欧米各地で活躍するようになりました。特にメトとの関係は深く、1959年まで看板テノールとして数々の舞台に出演しました。

録音とレパートリー

第二次世界大戦後、LPレコードが普及すると、ビョルリングはRCAビクターに招かれ、オペラ全曲録音に積極的に参加しました。1952年の『イル・トロヴァトーレ』を皮切りに、『カヴァレリア・ルスティカーナ』、『道化師』、『マノン・レスコー』、『アイーダ』、『ラ・ボエーム』、『リゴレット』、『トスカ』、『トゥーランドット』、『蝶々夫人』など、数多くの名盤を残しました。

ビョルリングのレパートリーは幅広く、ヴェルディやプッチーニの作品はもちろんのこと、グノーの『ファウスト』などフランス・オペラにも適性を示しました。また、『道化師』のカニオや『カヴァレリア・ルスティカーナ』のトゥリッドゥなど、ヴェリズモ・オペラの役も得意とし、リリコからスピントまで、様々な役柄を完璧に歌いこなしました。

早すぎる死

1960年3月、コヴェントガーデンでの公演直前に心臓発作で倒れました。過度の飲酒も一因だったと言われています。一命は取り留めたものの、同年9月、心筋症のためストックホルム郊外のサマーハウスで死去しました。49歳という若さでした。

代表的な出演オペラ

『ラ・ボエーム』ロドルフォ
『イル・トロヴァトーレ』マンリーコ
『ファウスト』ファウスト
『リゴレット』マントヴァ公爵
『仮面舞踏会』リッカルド
『トスカ』カヴァラドッシ
『ロメオとジュリエット』ロメオ
『カヴァレリア・ルスティカーナ』トゥリッドゥ
『マノン・レスコー』デ・グリュー
『ドン・カルロ』ドン・カルロ

遺されたもの

ユッシ・ビョルリングの歌声は、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。彼の残した数々の録音は、オペラ史における貴重な遺産として、永遠に輝きを放ち続けるでしょう。

彼の歌声は、YouTubeなどの動画サイトでも気軽に楽しむことができます。ぜひ一度、その美しい歌声に触れてみてください。

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