ユニコンブックス

1970年代半ば、ユニコン出版から子供たちの旺盛な知的好奇心に応えるべく、ユニコンブックスという名のユニークな叢書が世に送り出されました。1974年から1976年にかけて全11巻が刊行されたこのシリーズは、当時の児童書市場で人気を博した「怪奇系」の流れを汲みながらも、そのテーマは多岐にわたり、広範なサブカルチャー領域を横断する内容でした。

ユニコンブックスは、手に取りやすいB6判のハードカバーで、しっかりとした紙カバーが付けられた装丁でした。この体裁は、当時の多くの児童向けレーベルに見られた標準的な形式であり、子供たちが繰り返し読み、資料としても価値を感じられるよう配慮されていたと考えられます。全11巻というコンパクトなシリーズながら、それぞれの巻が独立したテーマを深く掘り下げる構成となっていました。

このシリーズ最大の特色は、そのテーマの幅広さにあります。単に流行の怪奇現象や未確認生命体だけを扱うのではなく、科学、歴史、人間、社会など、様々な分野から子供たちの興味を引く題材が選ばれました。

初期のラインナップには、論理的な思考力を養う『推理』や『スパイ』、偉人たちの秘密に迫る『天才』など、知的な探求心を刺激するテーマが含まれています。1975年には、生物や自然科学に関わる『人体』や『大恐竜』、空想の世界を描く『SF』に加え、当時のブームを反映した『怪奇』、そして実用的な知識としての『科学捜査』や『暗号』といった、より具体的なトピックが登場します。シリーズ最後を飾ったのは、歴史上の偉業を成し遂げた人物を取り上げた『巨人』でした。

ユニコンブックス一覧（全11冊）

以下に、刊行された全11巻のリストを記します。

1. 『推理 名探偵40人に挑戦』 加納一朗 著 (1974年)
2. 『スパイ スパイ術てってい解剖』 獅騎一郎 著 (1974年)
3. 『天才 天才102人のひみつ』 大野進 著 (1974年)
4. 『ミイラ ミイラ・なぞをさぐる』 たかしよいち 著
5. 『人体 人体びっくり解剖』 矢島輝夫 著 (1975年)
6. 『SF SFクイズに挑戦』 加納一郎 著 (1975年)
7. 『大恐竜 恐竜ものしり博物館』 小畠郁生 著 (1975年)
8. 『怪奇 実話! 62の怪奇スリラー』 加納一朗 著 (1975年)
9. 『科学捜査 科学捜査なんでも百科』 大野進 著 (1975年)
10. 『暗号 暗号なぞなぞクイズ』 獅騎一郎 著 (1975年)
11. 『巨人 世界48人の巨人・英雄』 笠原秀 著 (1976年)

これらのテーマは、児童書の分野で実績のある作家や、それぞれの専門分野に詳しい執筆者によって手掛けられました。例えば、加納一朗氏は推理小説や怪奇談、獅騎一郎氏はスパイや暗号といった探偵・諜報に関連するテーマを、大野進氏は天才や科学捜査といった分野を担当するなど、複数の巻を執筆した著者もおり、シリーズ全体に一定の質と方向性をもたらしていました。たかしよいち氏、矢島輝夫氏、小畠郁生氏、笠原秀氏といった他の執筆者も、それぞれの巻で独自の切り口からテーマを解説し、子供たちに新たな知識や驚きを提供しました。

当時の潮流と関連シリーズ

1970年代、特に半ば頃は、子供向けにUFO、UMA、超能力、世界の謎などを扱う「怪奇・オカルト児童書」が一世を風靡しました。ユニコンブックスもこの大きな流れの中に位置づけられますが、そのテーマの多様性において他の多くのレーベルとは一線を画していました。同時期に人気を博した類縁の児童向けサブカルチャー叢書としては、立風書房の「ジャガーバックス」、学研の「ジュニアチャンピオンコース」、講談社の「ドラゴンブックス」などが挙げられます。これらのシリーズと共に、ユニコンブックスは当時の子供たちの好奇心を刺激し、未知の世界への扉を開く役割を果たしたと言えるでしょう。

現在では古書として流通することが多いユニコンブックスですが、当時の社会や子供文化を知る上で貴重な資料となっています。国立国会図書館などの公的な機関にも所蔵されており、その内容を確認することが可能です。このシリーズは、単なるエンターテイメントに留まらず、科学、歴史、文化など、幅広い分野への関心を育むきっかけとなった、記憶に残る児童書シリーズです。

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