ユニバーサル・ロケット

ユニバーサルロケット（URファミリー）

ユニバーサルロケット、あるいはURファミリーとして知られるこのロケット群は、かつてソビエト連邦で開発され、現在もロシアによって運用が続けられている宇宙開発・軍事技術の結晶です。その名は、ソ連の全ロケットに可能な限り同一の技術を適用し、共通のコアステージを用途に合わせて組み合わせることで、大陸間弾道ミサイル（ICBM）から様々なペイロードを宇宙へ運ぶ打ち上げ機まで、大小多様な需要に柔軟に対応できる汎用性の高いシステムを構築するという壮大な構想に基づいています。このモジュラー設計の思想は、現代のロケット開発においても主流となりつつある考え方です。

URファミリーは、主にクルニチェフ国家研究生産宇宙センターによって設計・生産されました。当初は複数の派生型が計画されましたが、実際に宇宙空間に到達したのはそのうちの3種類に留まり、現在なお現役で運用されているのは、その中でもわずか2種類だけです。計画段階で終わったもの、転用されたもの、そして運用を終えたものなど、URファミリーの歴史は多岐にわたります。

主要な派生型

URファミリーにはいくつかの notable な派生型が存在します。

UR-100: 冷戦時代において、ソ連の標準的なICBMとしての役割を担いました。その設計は非常に成功し、後に衛星打ち上げロケットである「ストレラ」や「ロコット」の基盤としても活用されました。

UR-200: より大型のICBMとして、またキャリアロケットとしての使用も視野に入れられていました。1963年から1964年にかけて計9回の試験飛行が行われましたが、最終的に開発計画は中止されました。ライバルであるミハイル・ヤンゲリ設計局のR-36ミサイルとその打ち上げ機派生型であるツィクロンが選定されたためです。

UR-500: 当時のソ連が計画していた超大型ICBMとして設計されました。想定されていた核弾頭には、史上最大の核爆弾として知られるツァーリ・ボンバ級の超巨大なものが含まれており、それを運搬するために開発されました。しかし、ミサイルとしての開発計画は初期の飛行試験後にキャンセルされました。このUR-500は、その後3段目が追加される改良が施され、現在も運用が続けられている強力な打ち上げロケットである「プロトン」へと姿を変えました。プロトンは、重量級のペイロードを軌道に投入するために長年活用されています。

UR-700: ソ連の有人月探査計画のために、ウラジーミル・チェロメイによって設計された重量級打ち上げロケットです。宇宙飛行士を乗せた宇宙船（LK-1宇宙船など）を直接月へ送ることを目指していました。しかし、セルゲイ・コロリョフ率いるOKB-1（後のエネルギア）が開発したN-1ロケットとソユーズ宇宙船が月ミッション用に選ばれたため、UR-700は設計段階から先に進むことはありませんでした。
UR-700は、中央コアブロックを複数の側方ブースターが取り囲む、ソ連製ロケットに一般的な形態をとっていました。しかし特筆すべき特徴として、第1段エンジンの推進剤供給方法がありました。ブースターが燃焼している間、中央コアの第1段エンジンは、ブースターの燃料タンクから推進剤（ヒドラジンと赤煙硝酸）の供給を受ける「クロスフィード」方式を採用する予定でした。これにより、ブースター分離時に中央コアが満タンに近い状態で飛行でき、構造体のデッドウェイトを減らしてペイロード能力を高めることが期待されていました。

* UR-900: URファミリー構想における究極の発展型と位置づけられていました。これは、火星や金星といった地球以外の惑星への有人飛行ミッションを遂行するための、超重量級打ち上げロケット・ブースターとして計画されました。しかし、この巨大なプロジェクトも設計図の段階で終わり、実現には至りませんでした。

ユニバーサルロケットファミリーの歴史は、ソ連の宇宙開発・ミサイル開発における野心的な挑戦と、技術的な革新、そして時代の流れや政治的な決定による計画の変更や中止が交錯する複雑な道のりを示しています。一部の計画は幻に終わりましたが、UR-100の派生型やUR-500を基礎とするプロトンロケットは、その設計思想の一部を現代に伝える重要な存在となっています。

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