ユルバン・ジャン・フォーリー

ユルバン・ジャン・フォーリー：宣教師にして「最後の外国人プラントハンター」

ユルバン・ジャン・フォーリー（Urbain Jean Faurie, 1847年1月1日 - 1915年7月4日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて日本で活躍したフランス人宣教師であり、同時に熱心な植物採集家でした。パリ外国宣教会に所属し、日本各地で精力的に植物を採集し、その標本は世界の植物学研究に貢献しました。彼は「最後の外国人プラントハンター」とも呼ばれています。

生涯

生い立ち

1847年、フランスのオーヴェルニュ地方の農村で生まれたフォーリーは、幼少期から病弱であり、聴覚障害も抱えていました。しかし、聖フランシスコ・レジスの墓への巡礼を機に聴覚を回復したと伝えられています。ラ・サール会経営の小学校、モニストロルの小神学校を経て、パリ外国宣教会の神学校に進学し、1873年に司祭に叙階されました。

日本での活動

司祭叙階後、フォーリーはすぐに日本へ派遣され、新潟教会に赴任しました。布教活動は当初なかなか成果が上がりませんでしたが、植物学者アドリアン・ルネ・フランシェの依頼を受けて植物採集を始めたことが、彼の人生を大きく変えました。原敬が書生として働いていた時期には、彼と生活を共にし日本語を学びました。

新潟を中心に、新発田、五泉、三条などで植物採集を行い、その標本をフランシェに送りました。フランシェは、フォーリーの標本を元に『日本植物目録』を発表し、フォーリーの名は植物学の世界で知られるようになりました。その後、フォーリーはパリ自然史博物館とも関係を深めました。

東京への転任後、フォーリーはカトリック浅草教会や本所教会の設立、孤児院の運営などに携わりました。しかし、孤児院の院長としての職務に不満を抱き、東京脱出を企てます。庭園を破壊して野菜畑に変えるなどの行為が非難を浴び、最終的に北海道・青森県の巡回布教師として函館へ転出させられることとなりました。

函館では、ペティエ神父と共に布教活動を行いながら、北海道全域、千島、青森県で植物採集を続けました。1887年にはパリ自然史博物館の通信員に委嘱され、植物採集の範囲はさらに広がりました。弘前ではリンゴ栽培の指導も行い、剪定方法を伝えましたが、当時の栽培方法とは異なっていたため、普及には至りませんでした。しかし、この指導がきっかけとなり、様々な剪定方法が考案されるようになりました。

強制帰国とその後

1894年、過労と粗食が原因で体調を崩したフォーリーは、教区長の命令でフランスへ帰国することになりました。帰国後も標本整理に熱中し、各地の植物学者に標本を送りました。1896年に日本へ戻ると、青森教会主任司祭に任命され、布教活動を再開しました。日露戦争中には、フランス人宣教師としてスパイ容疑を受けましたが、植物採集の報酬を資金として布教活動を続けました。

1906年には朝鮮半島、1908年には樺太、1909年にはハワイで植物採集を行いました。1910年の青森大火で教会が焼失した際には、再建に尽力しました。しかし、1913年に教区長から「植物採集と司牧のどちらが大切か？」と問われ、青森教会主任司祭を辞任し、台湾へ向かいました。

台湾での最期

台湾では、北部から南部まで各地で植物採集を行いましたが、1915年に体調を崩し、台北病院で診察を受けた結果、鼻腔にヤマビルが侵入していることが判明しました。その後も病状は悪化し、1915年7月4日に亡くなりました。臨終の際には、ミサや祈祷、標本整理の動作を繰り返したと伝えられています。

死後

フォーリーの死後、台北植物園には彼の銅像が建設され、その功績が讃えられました。また、彼の貴重な植物標本が散逸することを憂えた植物学者たちによって、京都大学に標本が寄贈され、保管されることになりました。

功績

フォーリーは、日本各地だけでなく、樺太、台湾、朝鮮半島、ハワイなどでも植物採集を行い、多くの新種を発見しました。彼の採集した標本は、世界の植物学研究に大きく貢献し、現代の植物図鑑にもその名が数多く残っています。彼の邸宅には、宮部金吾、牧野富太郎など、当時の日本の植物学の権威が集まり、研究を行いました。

関連項目

ミヤマウスユキソウ：学名にフォーリーの名が付いている植物
パリ外国宣教会
カトリック浅草教会
カトリック本所教会
* カトリック弘前教会

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